走りの楽しさと快適性、SUV本来の機能を兼ね備えた、貴重な本格コンパクトSUV スズキ・エスクード1.4ターボ試乗|これはSUVのスイフトスポーツ、トヨタC-HRに強力なライバル出現。
- 2017/10/01
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遠藤正賢
ハンガリー子会社のマジャールスズキ社で生産されたものが日本へ輸入、販売されている現行4代目スズキ・エスクード。2015年10月の国内発売以来「1.6」のみ設定されていたが、今年7月に待望の高性能モデル「1.4ターボ」が追加された。果たしてその走りとは。
先代3代目ではビルトインラダーフレームを持つFRベースの本格SUVだったスズキ・エスクードが、2015年10月に国内販売が開始された現行4代目では、SX4 S-クロス譲りの新世代Cセグメント用FFプラットフォームを採用。車重が約400kg軽量化されながらも、高いボディ・シャシー剛性を得て、路面と速度域を問わずしなやかな乗り心地とハンドリングを備えている。
だが、その極めて高いシャシー性能に対し、デビュー当時唯一設定されていたのは、117ps/6,000rpm・15.4kgm/4,400rpmというスペックのM16A型1.6L直4ガソリンNAエンジンと6速ATを組み合わせる「1.6」のみ。4WD車で1,210kgという車重以上にシャシーがパワートレインの性能を圧倒的に上回る印象を、特に高速道路やワインディングで乗り手に与えていた。
しかしながら、待望のK14C型1.4L直4直噴ガソリンターボ「ブースタージェットエンジン」と6速ATを搭載する高性能グレード「1.4ターボ」が、今年7月26日に追加された。
このエスクード用K14C型はレギュラーガソリン対応ながら、最高出力は19psアップの136ps/5,500rpm、最大トルクは実に6kgmアップの21.4kgmを、2,100~4,000rpmの低回転かつ広範囲で発生する。
6速ATが静粛性および燃費向上のため、1・2速を中心にギヤ比が高められているのが懸念材料ではあったものの、1.6の致命的な弱点を解消してくれるパワートレインがようやく搭載されたものと、試乗する前から期待値は最高潮に達していた。
実際に試乗すると、その期待は、良い意味で裏切られることになる。
「走り出した瞬間から、その良さが体感できる」とは、やや誇張気味に使われることが多い宣伝文句だが、このエスクード1.4ターボにその通例は当てはまらない。1,500rpm時点で20kgm近いトルクが生み出されるため、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に余裕のあるを加速感を得られる。しかもそのレスポンスは決して敏感すぎず、ペダルストロークとエンジン回転に対してリニアに加速していくため、一般道を流れに沿って走る時でも意のままに速度をコントロールできる。
1.6が苦手とする高速道路やワインディングではどうか。高速道路では、トルクのみならずパワーも全回転域で大幅にアップした効果は大きく、追い越し加速で低回転域から高回転域まで回しきっても、ダウンサイジングターボにありがちな「低回転域の高トルクに対し高回転域のパワーが少なく、高回転高負荷域ではむしろかったるい」ということはない。むしろ回転が上がるほど、ターボながら伸びの良い加速とともに甲高い快音を響かせるため、不必要に高回転域を多用したくなるほどだ。
そして、ワインディングに持ち込むと……「これは楽しい!」と、あまりにもシンプルな感想を、ただただ叫び続けるより他になくなってしまった。
この1.4ターボ、1.6に対するシャシーの変更点はない。全長×全高×全幅=4,175×1,775×1,610mm、ホイールベース2,500mm、車重1,220kgと、SUVとしては軽量コンパクトかつ低重心なパッケージもほぼ同じ(車重のみ1.6L NAは1,210kg)で、215/55R17 94Vのコンチネンタル・コンチエココンタクト5を履くという点も同様だ。
直進では、低速域でひび割れた路面を走っても不快なフロアの振動は発生せず、高速道路で継ぎ目を踏んでも強い突き上げ感はなく、フラットライドに終始する。そしてコーナリング時は、ゆっくりとロールしながらリニアにヨーが立ち上がり、路面の凹凸をしなやかにいなしながら弱アンダーステアを維持するという、現行エスクードがデビュー当初から備えていた理想的な乗り心地と操縦安定性を、そっくりそのまま受け継いでいる。
このシャシーと電子制御4WD「オールグリップ」に、3,000rpm程度まで回せば急坂も楽に上れる高トルクかつ、高回転域の伸びもサウンドも心地よい1.4Lターボエンジンが組み合わされることで、ワインディングでは上り・下り問わず抜群のコントロール性を獲得。「オールグリップ」を「SPORT」モードに切り替えるか、パドルシフトを駆使して6速ATをマニュアル変速させて走ればホットハッチ、それも本場欧州の上質なそれに匹敵する走りの世界を堪能できる1台に仕上がっていた。
このエスクード1.4ターボには、走りのみならず内外装にも、ホットハッチのテイストが盛り込まれている。
エクステリアには、5スロットタイプのメッキフロントグリル、ブラック塗装の17インチアルミホイール、レッドプロジェクターカバー付きLEDヘッドランプ、高輝度シルバー塗装のLEDサイドターンランプ付きカラードドアミラーおよびルーフレールを装着。
室内には、レッドステッチ入りのステアリングホイール・シフトブーツ・シート、アルマイトレッド加飾入りのメーターリング・エアコンルーバーリング・センタークロックガーニッシュ、ステンレス製ペダルプレートが装着された。
この戦闘ムード満点の内外装はドライバーをその気にさせ、道行く人から「格好良いね、これ。何ていうクルマ?」と声を掛けられることも一度ではないほど目を引くものとなっている。
だが、室内に目を移すと、1.6ではさほど気にならなかった点が、この1.4ターボでは目に付くようになっていた。それは、1.6L NAで2,343,600円、1.4ターボで2,586,600円という価格に対し、運転席まわりの質感が低いことだ。
充分なサイズが確保された本革×スエード調シートこそ質感が高く、生地も滑りにくいためホールド性も良好だが、アッパー・ロアともハードパッドのインパネは太陽光に対して平板なツヤを返し、シルバーのガーニッシュがそれに拍車を掛ける。そしてアルマイトレッドのリング類はいかにも走り屋のクルマのようで、クルマに興味がない他人を乗せるのがためらわれてしまう。
また、1.4ターボにのみ装着されるステンレス製ペダルプレートは、滑り止めのゴムが表面にないため滑りやすい。しかも、ペダルの取り付け位置が高いため、足のサイズ25.5cmの筆者が細身で裏底の溝が浅いドライビングシューズを履いて運転すると、信号待ちで長時間ブレーキペダルを踏み続けようとしても途中で滑り落ちてしまい、クルマが前に進んでしまうことが何度かあった。
なお、フロントグリル中央のミリ波レーダーによる衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート2」およびACC(アダプティブクルーズコントロール)は1.4ターボにも標準装備されている。前者は聞き取りやすい警告音と早めのブレーキ作動で事故防止に役立つが、後者は車間距離を最も短い設定にしても間隔が大きく、前走車がいなくなった後の再加速もタイミングが遅いため、意のままに走れずかえってストレスが溜まることの方が多いように感じられた。
これらの点は、来年にも実施されるというマイナーチェンジの際にぜひとも改善してほしいところだが、それでも極めて上質かつ楽しさに満ちた走りを持つSUVであるという事実は変わらない。このエスクード1.4ターボに試乗したのは新型スイフトスポーツの発表前だったが、「これはSUVのスイフトスポーツだ!」と思わずにはいられない、そんなキャラクターの持ち主だった。
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