アナタが思うよりもF1に近い! ルノー・メガーヌR.S.トロフィーRは何から何まで本気すぎる ルノー・メガーヌR.S.トロフィーR……F1ジャーナリストを震撼させたテクノロジー【第1回:エンジン編】〈試乗インプレッション〉 PR
- 2020/02/15
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世良耕太
ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで市販FF世界最速タイムの7分40秒1を叩き出したルノー・メガーヌR.S.トロフィーR。この世界限定500台のスペシャルマシンには、F1直系のテクノロジーが満載されている。F1やル・マン24時間レースなど、世界トップカテゴリーのレーシングマシンのメカニズムに造詣の深いジャーナリストの目で見ると、メガーヌR.S.トロフィーRは「ルノー・スポール」にしか作れないスポーツカーだという。前編、後編の二部構成でお届けする本レポート。第1回はエンジン編である。
REPORT●世良耕太(SERA Kota)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
ルノーの知見は間違いなくモータースポーツに由来する
ルノー・メガーヌR.S.トロフィーRは、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで量産FF車最速タイムを記録するために生まれてきたモデルである。ベースは、メガーヌR.S.トロフィーだ。トロフィーRは徹底した軽量化とサスペンションをはじめとするシャシー性能、それに空力性能とエンジンの応答性を高めることによって、記録更新に挑戦した。
そして、見事に記録更新を果たしている。2019年4月5日、メガーヌR.S.トロフィーRは全長約20.8kmの難コースを7分40秒100で走り、2014年に先代メガーヌIII R.S.トロフィーRが記録したタイム(7分54秒36)を14秒26も短縮した。率にして3%である。平均的なグランプリコース……例えば1周1分40秒のサーキットなら、3秒のラップタイム短縮に相当する。
F1では不断の技術開発によって1年に約2秒(率にして2%)ラップタイムが向上すると言われている。サーキットでの3秒のラップタイム向上(実際、最新のメガーヌR.S.トロフィーRは、鈴鹿サーキットの走行テストで先代のタイムを3秒以上短縮した)をF1に当てはめれば、1年半分だ。
技術の粋を結集して開発するF1に匹敵する技術が、ニュル最速を目指したモデルにも注ぎ込まれていると理解していい。生半可な意気込みで企画されたモデルでないことだけは確かだ。
もっと振り返っておくと、2011年のメガーヌIII R.S.トロフィーの記録は8分7秒97であり、2008年のメガーヌII R.S. R26.Rの記録は8分16秒90だった。これらの記録を振り返ると、最新のメガーヌR.S.トロフィーRがいかに高いパフォーマンスの持ち主かがわかる。
ニュルを速く走るにはどうすればいいのか、クルマの運動性能を高めるにはどうすればいいのか、という点について、ルノーは確かな知見を持っているに違いない。
そしてその知見は間違いなく、モータースポーツ由来だ。今さら説明するまでもなく(と言いつつ説明するが)、R.S.はルノー・スポールの略である。ルノー・スポールには、モータースポーツ活動を行なうルノー・スポール・レーシングと、市販スポーツモデルの開発を行なうルノー・スポール・カーズのふたつの部門が存在する。
組織も拠点も異なるが、F1参戦活動が両部門の技術とイメージを牽引する。2020年F1シーズンを戦うルノーのワークスマシンは、ネーミングの伝統に則って「R.S. 20」と名づけられた。高いパフォーマンスを保証する「R.S.」の文字が入っている。
ニュル量産FF車最速のメガーヌR.S.トロフィーRは、世界で500台のみ生産される限定モデルだ。このうち30台は、カーボンセラミックブレーキとカーボンホイール、エンジンルームの冷却を助けるダイナミックエアインテークをセットにした「カーボン・セラミックパック」である。日本への割り当ては、メガーヌR.S.トロフィーRが47台、カーボン・セラミックパックが4台だ。
エンジン本体は共通で、ベースとなったメガーヌR.S.トロフィーと同じ1.8L直列4気筒直噴ターボを搭載する。221kW(300ps)/6000rpm、400Nm(40.8kgm)/2400rpmの最高出力、最大トルクに変更はない。トロフィーRは6速DCT(ルノーの呼称ではEDC)よりも軽量であるという理由から、6速MTのみの設定となっている。
ルノーといえばターボだ。そのイメージを決定づけたのはF1である。F1史上初めてターボエンジンで優勝を飾ったのはルノーであり、2019年にはF1初優勝40周年を祝ったばかりである。ルノーは技術を鍛える実験室としての役割をF1に求めた。同時に、前例のない技術で高いハードルにチャレンジする情熱的な企業姿勢を世界に発信しようとした。
1977年、3.0L自然吸気エンジンが主流を占める状況で、ルノーは彼らに言わせれば「アバンギャルドな技術」であるターボエンジン(1.5L V6シングルターボ)をF1に持ち込み、自分たちの先進性を証明しようとした。
ところが初期はトラブルが頻発し、よく白煙を噴いてリタイアした。その様子から、「イエロー・ティーポット」というありがたくないニックネームを頂戴することになる(77年のルノーRS01は、ルノーのコーポレートカラーであるイエローのカラーリングをまとっていた)。
ツインターボに進化した1.5LV6エンジン、EF1を積んだルノーRS01は、1979年の地元フランスGPで念願の初優勝を遂げる。これが、後に隆盛を迎えるターボ時代の火付け役になった。フェラーリが、BMWが、ホンダがターボエンジンを採用したのは、ルノーEF1という成功例があったからだ。
47台限定 & 4台限定のルノー・メガーヌR.S.トロフィーRで筑波を攻めてみたけれど、緊張感がハンパなかったというお話【サーキット試乗記】
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