ポルシェ911タルガ、その55年の歴史振り返る。オープンカーの開放感とクーペの快適性を融合した稀有な存在
- 2020/05/27
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MotorFan編集部
1965年9月、フランクフルトモーターショーで初代911タルガは発表された。カブリオレでもクーペでもなく、ハードトップでもサルーンでもない。取り外し可能なルーフのおかげで、オープンドライブを気楽に楽しめる911として、多くのユーザーからタルガは歓迎された。そしてこれ以降、911のすべての世代にラインアップされる定番モデルとなったタルガ。最新タルガ(タイプ992)が発表されたばかりのこのタイミングで、タルガの歴史を振り返ってみたい。
タイプ901:開放感と安全性の両立、その難題の答えがタルガだった
1960年代、ポルシェの重要なマーケットの一つであるアメリカでは、オープンカーの安全性に対する要求が高まっており、「カブリオレを全面的に禁止すべき」という意見も上がっていた。そうした声に応えるべく誕生したのがタルガだ。
このモデル名の由来が、1950年代半ばからポルシェが大きな成功を収めてきたシチリア島のロードレース、「タルガ・フローリオ」であるのは有名な話だ。
当初、「911フローリ」という名前がネーミングの候補だったが、ドイツ国内販売責任者のハラルド・ワグナーが「シンプルにタルガと呼べばいいではないか」と提案したことで、議論は収束した。
ポルシェは1965年8月、タルガのコンセプトの特許を申請。1966年秋からタルガは911、911S、912に採用されて大成功を収めた。
1967年の夏の終わり頃からは、プラスチック製の折り畳み式リヤウィンドウの代わりに、安全ガラス製のヒーター付きリアウィンドウをオプションでオーダーすることができるようになった。この装備は1年後に標準仕様となり、1993年まで多かれ少なかれタルガの特徴となったのである。
タイプ930:2代目911にも受け継がれたタルガ
タルガは、1973年の晩夏から製造が開始された第2世代の911、Gシリーズ(タイプ930)にも採用された。初めて大規模な改良が施された911のボディは、アメリカの新しい法律に合わせたボックス型バンパーが採用された。このビッグバンパーは、時速8kmまでの衝撃をボディにダメージを与えることなく吸収することができた。
タルガのルーフデザインに変更はなかったが、従来の耐久性に優れたブラッシュ仕上げのステンレススチール製タルガロールバーにブラックが追加されたのがトピックとなった。
1983年1月にはフルオープントップで走行可能なポルシェとしてカブリオレがラインアップに加わった。しかし、それ以降もタルガは911にとってなくてはならぬボディとして存在し続けたのである。
タイプ964:85%刷新されたボディだが、タルガルーフは伝統を継承
1988年秋、ポルシェが発表した3代目の911、タイプ964は初の全輪駆動911でもあった。ポルシェは、911のクラシックなボディ形状を踏襲しながらも、約85%の部品を刷新した。ちょうど1年後には、後輪駆動の911カレラ2がラインアップに加わった。
カレラ4とカレラ2では、それぞれ3つのボディタイプをオーダーすることが可能だった。すなわち、クーペ、カブリオレ、タルガである。1993年まで製造されたタイプ964のタルガには、クラシックなロールバーと取り外し可能なルーフセンターセクションが残っていた。
タイプ993:タルガロールバーと決別し、ルーフシステムを刷新
ガラリとタルガのコンセプトが変更されたのは、第4世代の911、タイプ993からだ。1993年秋に新しいボディデザインとの組み合わせで登場したタイプ993だが、1995年11月にお披露目されたタルガではロールバーが廃止されていた。
その代わり、ルーフ部分は熱線吸収ガラスとなっており、ボタンを押すだけでスムーズにオープンすることが可能で、巨大なガラスは大きなスライドルーフのようにリアウィンドウの後ろにすっきりと格納される。
この新しいタルガの利点は、ルーフを閉じたときの風切り音の低減と、太陽の光をたっぷりと浴びられる車内環境を両立できることだ。また、クーペのルーフラインを損なうことなく、オープントップのドライビングプレジャーを味わえることもユーザーから歓迎された。
タイプ996:跳ね上げ式リヤウインドウが荷室へのアクセスを向上
ポルシェは1997年に第5世代の911カレラ、タイプ996を発表した。タイプ996はデザインが一新されただけでなく、初めて水冷6気筒ボクサーエンジンを採用したことでも話題を呼んだ。
タルガは2001年12月に登場、先代モデルと同様に電動式ガラスルーフを採用していた。ガラスルーフの表面積は1.5平方メートルを超えるが、これはポルシェ911で最大のガラスであった。
また、新型タルガは、911で初めて開閉式のリアウィンドウを搭載したモデルでもある。これにより、バッグやスースケースを最大230ℓの荷室へ積む際のアクセスが容易になった。
タイプ997:ルーフガラスを1.9kg軽量化。4WDのみにタルガを用意
2006年9月、6代目911(タイプ997)のタルガが導入された。クーペライクなルーフデザインや実用的なリヤリッドなど、基本コンセプトは先代から継承した。タイプ997では特殊ガラスを採用することで1.9kgの軽量化が図られたほか、サイドウインドウの縁には高光沢ポリッシュアルミニウムストリップが追加された。
タイプ997のタルガは、2種類の4WDモデル(911タルガ4と911タルガ4S)でのみ選択することができた。これは、最新のタルガ(タイプ992)においても同様である。
タイプ991:原点に立ち返るべく、すべてが新しくなったタルガ
2011年9月、ポルシェは911を7代目(タイプ991)へとフルモデルチェンジ。クーペとカブリオレに続き、2014年1月にタルガを発表した。
新型タルガは、革新的なタルガルーフを備えた現代のクラシックカーとして登場した。古典的なタルガのアイデアと最先端のルーフの利便性を初めて融合させることに成功したのだ。
新型タルガを構成するのは、Bピラーの代わりとなる特徴的なワイドバー、可動式のルーフセクション、Cピラーのないラップアラウンド型のリヤウィンドウだ。これらはタイプ901〜タイプ964の時代のタルガと共通性が感じられる部分だが、過去のタルガと異なるのは、新型タルガのルーフはボタンを押すだけで開閉できること。フルオートマチックのルーフシステムは、リヤシートの後ろにルーフを時計仕掛けのような精密な動きで格納するのだ。
タイプ992:歴代タルガ最強のパフォーマンスを発揮
タイプ991の後継となるタイプ992は2018年11月に登場、それをベースとした新型タルガも5月18日に発表された。
好評だったルーフ格納システムはそのままで、911タルガ4とタルガ4Sを設定。3.0ℓツインターボエンジンは、タルガ4Sで450psを発揮する。最高速度は304km/h(タルガ4S)、そしてオプションのスポーツクロノパッケージを装着したタルガ4Sは0-100km/h加速を4.2秒で達成してのける。このパフォーマンスは、間違いなく歴代タルガで最強である。
「最新の911は最良の911」というのは良く知られたフレーズだが、タルガもその例外ではないのである。
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参考:ポルシェ911タルガ・歴代生産台数
タイプ901(1996年1月〜1973年7月) 2万5429台(タルガ)/7万6092台(911全体)
タイプ930(1973年9月〜1989年7月) 5万7371台(タルガ)/19万6397台(911全体)
タイプ964(1989年10月〜1993年7月) 4863台(タルガ)/6万3762台(911全体)
タイプ993(1995年11月〜1998年4月) 4585台(タルガ)/6万8881台(911全体)
タイプ996(2001年12月〜2005年3月) 5142台(タルガ)/17万5262台(911全体)
タイプ997(2005年12月〜2012年5月) 8459台(タルガ)/21万3004台(911全体)
タイプ991(2014年1月〜2019年12月) 1万9373台(タルガ)/23万3354台(911全体)
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