新型Mazda3(アクセラ)が全面採用するSKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの理屈──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第2弾
- 2018/11/18
-
安藤 眞
SKYACTIV-Xエンジンにばかりに注目が集まる新型MAZDA3(日本名アクセラ)だが、もうひとつの重要な柱が、SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE。SKYACTIVコンセプトの哲学である“原理原則”と“人間中心”を立脚点として構築された車両構造を指す。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
人間が本来持っている移動手段は“歩行”。その際の体の動きを分析したところ、脚の動きに合わせて骨盤と上半身を逆位相に動かし、頭部の動きを抑えていることがわかった。クルマを運転している際にも、この機能を発揮させることができれば、頭部の安定した運転が維持できるようになり、クルマとの一体感が高まって、運転しやすく疲れにくいクルマに感じられるはず。それを実現するための車体構造が、SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREである。
それに必要なのは、ドライバーを歩行時同様の姿勢で座らせ、歩行と同じような入力を感じさせること。そこでまず、ドライバーが着座した際に、骨盤から上が歩行時と同じ姿勢になるよう、シートクッションの形状を作り込んだ。具体的には、骨盤を立て、脊椎が自然なS字を描くような姿勢である。
さらにシート骨格は、①荷重伝達の遅れを最小限にすること、②荷重伝達特性に変曲点を作らないこと、を目標に、フレーム剛性の向上や、可動部のガタの排除を実施。これによって、ばね上の動きに対する骨盤の変位を抑制し、脚からの入力と同じように、クルマの動きを骨盤に伝える構造を作り上げた。
シートのつぎは、ボディ骨格。これも、サスからの入力の伝達を遅れなく伝えることを目指した。有り体に言えば「ボディ剛性の向上」だが、得に注力したのが、対角方向の変位。いわゆる「捩り剛性」だ。
具体的には、ボディ側面の環状構造もしっかりとつなぐこと。従来は、ボディを輪切りにする方向の骨格は“環状”が成立していたが、後席ドア開口部はホイールハウス部に骨格が通っておらず、環状構造が途切れていた。新構造ではここをつないだのに加え、他の骨格の結合部分も稜線を滑らかにつなぎ、伝達特性の変曲点を排除。リヤサス入力をバックドア開口骨格に伝達するなどの改良を行い、フロントダンパートップに入力されてから対角のリヤダンパートップに伝達されるまでの時間を約30%短縮している。
ばね上のつぎは、ばね下の対策。従来は、タイヤやサスペンションアーム、ばね&ダンパーは別部品として設計され、チューニング領域で乗り心地を仕上げていたが、これをひとつの“系”として捉え直した。チューニング領域でも、従来は入力のピークを抑えることに注力してきたが、入力の変位を滑らかにすることを重視する方向に変更を図った。力は「質量×加速度」だから、「加速度の変位を滑らかにする」と言い換えても良い。
例えばこれまでは、タイヤは転がり抵抗の低減を優先し、サイドウォールの剛性を高めに設計していた。しかし、タイヤが変形しにくい分だけ、加速度は唐突に立ち上がる。これがサスペンションアームに伝わると、アームが変形して加速度が小さくなるが、ばね&ダンパーが作用し始めると、加速度は再び立ち上がる。加速度が不規則に変化するということは、歩行で言えば不整地や滑りやすい道を歩いているのと同じで、人体のバランス保持機能では追従しきれない場合も出てくる。
そこで、加速度の変位を可能な限り抑制できるよう、タイヤの縦ばねやサスペンションアームの剛性、ジオメトリー剛性などを連続した“系”として設計。加速度の変位に伴うギクシャクした動きを抑制することで、人体への入力を歩行時のそれに近づけた。
以上が公表されている資料から読み取ったSKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの理屈だが、実はアテンザやCX-8には、すでにこうした考えかたの一部が反映され始めており、試乗すればはっきりと体感できるほどの効果を得ている。
それが“全部載せ”になったら、どんな性能になるのか。新型アクセラに試乗できる日を、楽しみに待ちたい。
発表間近の新型マツダ・アクセラが積むSKYACTIV-Xがすばらしい理由
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費が劇...
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形往復...
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に洗練...
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこそ光...
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4とリフ...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説
3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...
3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...
スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...
ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...
ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?
3分でわかる!アシスト&スリッパークラッチって何? 250ccからリ...
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
マツダ アクセラスポーツ
1.5 15S ワンオーナー 360度ビューモニター 車線逸脱警報 LEDライト ハイビームコントロール ドライブレコーダー
中古価格 142.5万円
マツダ アクセラスポーツ
1.5 15S マツコネナビ 360°モニター アドバンストSCBS BSM 車線逸脱警報システム ハイビームコントロール Bluetoothオーディオ イモビ 地デジTV エアバック 禁煙 DVD再生 記録簿
中古価格 153.5万円
マツダ アクセラスポーツ
15S プロアクティブ マツダコネクトナビ ETC 360°モニター 運転席パワーシート 360°ビューカメラ ACC BTオーディオ 横滑防止装置 DVD再生 バックモニター オートエアコン Pシート イモビライザー
中古価格 133.5万円
マツダ アクセラスポーツ
15S プロアクティブ 360°ビューモニター HUD BSM・RCTA 衝突軽減ブレーキ 車線逸脱警報 レーダークルーズ パドルシフト ETC 純正ナビ BTオーディオ フルセグTV USB端子 スマートキー LEDライト
中古価格 160.6万円
マツダ アクセラスポーツ
15XD プロアクティブ LEDランプ i-stop 1オナ クルーズC DSC パワーシート 地デジ DVD再生 AW パワーウインドウ キーレスエントリー メモリナビ サイドエアバッグ ABS オートエアコン ETC
中古価格 105.9万円
マツダ アクセラスポーツ
15S プロアクティブ
中古価格 138.7万円