1.4ℓ直噴ターボを搭載したスズキの新型スイフトスポーツに乗ってみた!(チョイ乗り) 【試乗】スズキ新型スイフトスポーツは派生モデルではなく、ほぼ専用設計のエキサイティングなモデルだった
- 2017/10/19
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MotorFan編集部 野﨑 博史
新型スイフトスポーツの評判がすこぶるいい。雑誌やWEBですでにその評判はお見知り置きとは思いますが、試乗した多くの自動車ジャーナリストの方たちが手放しに太鼓判を押しています。モーターファンでも試乗する機会を得ました。ターボエンジンの搭載とワイドボディによる3ナンバーにしたことで、新たな性能領域へと進化していました。
試乗会へ出向く前に、少しくらい情報を入れておこうと発表時に入手したプレスリリースを拝読していますと、
「高出力・高トルクな1.4ℓ直噴ターボエンジンを搭載」
「軽量高剛性な新プラットフォーム“HEATECT(ハーテクト)”の採用で1tを切るボディ」
「ワイドトレッド化した初の3ナンバーボディ」
「床下に空力カバーを広範囲に配置」
と、我々メディアが飛びつきそうな性能や技術に関する謳い文句が列記されています。大幅なトルクアップ、軽量化、ロー&ワイド化、優れた空力特性など改良された性能を鵜呑みにして信じれば、先代のスイフトスポーツを余裕でしのぐ「速さ」を手に入れているはずです。
先代のスイフトスポーツ(ZC32S型)がフルモデルチェンジを受けた際、初代スイフトスポーツ(ZC31S型)からの“キープコンセプト”ということでしたが、ホイールベースは40mm延長され、中身は安定指向にふられました。また、エンジンは1.6ℓ・直4NAのM16A型をそのまま引き継いでいるものの、世の中の燃費至上主義の波に乗せられたのか、基本はスポーツなんだけど、どことなくマイルドになった雰囲気がありました。ZC31Sの登場で、スイフトスポーツは“ピュア・ホットハッチ”としてチューニングする層に非常に高い支持を受ける車種となりましたが、二代目のZC32Sはクルマとして進化はしているものの、チューニング層からは少しガッカリしたという声は少なくありませんでした。
昨年末、第三世代のグローバルコンパクトカーとしてひと足先にデビューした標準車のスイフトは、Bセグメント向け新型プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を得て、120kgの軽量化を実現。我々の度肝を抜きました。スイフトスポーツももちろんハーテクトを採用しております。標準車のポテンシャルアップが走りの本質を非常に高いレベルまで押し上げていただけに、それに比例してスイフトスポーツも良くなっているだろうということは否が応でも期待してしまいます。果たして新型スイフトスポーツ(ZC33S型)は、ZC32S型の性能を上回り、ZC31S型のようなワクワク度を与えてくれるでしょうか?
結論から言うと、6MT車を短時間かつ短距離の試乗でしたが、その実力の片鱗は十分に窺えるデキでした。それでは試乗して感じた率直な感想に対して、シャシーやエンジンの開発に携わったエンジニアからの見解を述べる形でレポートしようと思います。
【シャシー】タイヤの支持剛性の大幅アップにより、走りが劇的に進化
──乗って、まず驚いたのはシャシー性能の高さです。新プラットフォーム「ハーテクト」により基本性能を高めたボディの影響はもちろんですが、それよりももっとタイヤからの入力に近い車軸の支持剛性がしっかりしている感じで、ステアリングを握った手やシートに埋めるお尻から強靭さが感じ取れます。もともと世界戦略車として登場した初代スイフトスポーツからボディ剛性の高さは定評がありましたが、この感覚は先代モデルでは体感できなかった部分です。それによってタイヤが路面を捉えている状況がドライバーに伝わりやすく、走行安定性の底上げがなされているのは間違いないようです。
「サスペンションに関しては、先代のスイフトスポーツでやりきれなかったダンパーの作動抵抗を低減することにこだわって設計しています。スポーツになるとタイヤからの入力が強烈ですので、入力点に近いタイヤの軸のブレを抑制することが重要です。そのためにフロントのハブベアリングをユニット化しました。路面とタイヤの接地角度の無駄な変化を抑制し、少しでもダンパーをスムーズに動かしてきっちり仕事をさせようという狙いです。サプライヤーさんには、ベアリング間隔を拡大してベアリングに変な荷重がかからない位置を指定させてもらい、キャンバーの剛性を上げています。
リヤも同じで、従来までトレーリングアームから、別体のブラケットを介してハブを取り付けていましたが、標準車も含めて、トレーリングアームにダイレクトにハブベアリングを取り付けて、それ自体で曲げ剛性を上げています。また、トーションビーム本体も標準車からねじり剛性を30%アップして強化しています。トーションビームは構造上、モーメントが入りやすいので、トレーリングアームの断面形状や板厚も見直しました。どちらもスポーツ専用設計です」
──土台がしっかりしたおかげで、ダンパーのストロークが有効活用されていてバンプ・リバンプともしっかり仕事をしている感じで、アンジュレーションのある路面もしっかり追従してくれます。スポーツらしく適度な硬さはともない、橋桁の継ぎ目などではある程度ショックはきますが、想像よりもかなり少ないです。うまく伸びるし、そのあとの縮むときの減衰コントロールが秀逸。スッと戻らないで、戻り切る寸前で抑え気味になっているとでも言いましょうか。タイヤからのゴツゴツ感もありません。
「ストローク感をうまく使えるようにセッティングしています。タイヤはコンチネンタルSportContactで、タイヤサイズは先代モデルと同じ195/45R17です。タイヤの仕様としてはワンランク上の車重でもいいくらいで、先代より車重が70kg軽くなったことを考慮して、タイヤのタテばねはオリジナルのものにしてもらっています。路面からの大きな入力の一発目はタイヤのタテばねのしなりで受け止め、そのあとショックアブソーバーの減衰で受ける順番になるような味付けにしています。ショックアブソーバーは、歴代モデルから引き続き、テネコオートモーティブ社のモンロー製です。ただ、バブル構造を見直して減衰力特性は、ピストン速度の低い低速域から減衰を出して、ピストンスピードが速いところでもリニアに効かせるようにしています。ストローク値は先代モデルと比べると、フロントは5mmくらい伸ばしています。リヤはほぼ一緒です。フロント5mmと言っても体感的にはほとんどわからないレベルですが、フロント側の伸び側の減衰を落として伸びるようにして、路面の追従性をよくしています」
──タイヤの支持剛性の向上によりがっちりと路面を捉えるセッティングは、コーナリングでも威力を発揮してくれます。標準車より+30mm、先代モデル+40mmワイド化(3ナンバー)された影響も加味されてロール剛性が高く安定感が増しています。ステアリング操作に対しての応答性もリニアです。さらに、そこからコーナーの立ち上がりではアクセルをガバッと開けて入っても、しっかりとトラクションを受け止めて支えてくれるので非常に安心感があります。
「トレッドを広げたのは商品企画からの提案で、シャシー側は渡りに船って感じでした(笑)。ワイドトレッド化でいうと、フロントのロアアームを長くしています。長くすることでスカッフ変化が少なくなる。そうするとキャンバー変化を抑えられるメリットがあります。リヤ側もトレーリングアームの形状を変更し、標準車と同じ取り出しの位置から、外側に張り出しを大きくしています。先代の標準車比でいうと片側20mm広がっています。通常は、遠くなればなるほど剛性は弱くなる方向ですが、トレーリングアームの断面積を微妙に増やして、タイヤが支持剛性を上げながらワイド化しました。タイヤの軸ブレを抑制し、専用のスタビライザーやコイルスプリングでロール剛性を最適化しながら、その先は早めにバンプストッパーに当てて、ジワリとロールさせつつ荷重移動を行なえるようなセッティングにしています。そのためパンプストッパーはゴムからウレタン製に変更しました。
ステアリングの支持剛性アップもキモです。サスペンション同様、スポーツになるとタイヤからの入力が強烈なので、ステアリングの支持剛性を上げていかないと正確なハンドリングができません。従来モデルは、サスペンションフレームの上に、別体のブラケットを介して、ステアリングギヤボックスにマウントし、必要に応じて補強して補っていました。それを今回の新型ではブラケットを介さず、ダイレクトマウントにして剛性を上げています。これはやはり新型のプラットフォームの存在が大きくて、もともと開発陣が狙っていた最終着地点はスポーツでした。シンプルな部品で構成することで軽量化にもつながっています」
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