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ルノー・トゥインゴでパリの街中を走ってみた【試乗記:都会で際立つRRのアドバンテージ】

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セーヌ川沿いを疾走するトゥインゴTCe90。日本仕様と同じ0.9ℓターボと6速DCTを組み合わせたモデルだ。軽量コンパクトなボディに90㎰は十分以上のパフォーマンスをもたらし、後輪駆動ならではのナチュラルなハンドリングも相まって、「ちょっくらやったるか」という気にさせてくれる。クラス唯一のDCTがもたらすスムーズな走り味も魅力だ。

リヤタイヤがぐっと踏ん張り、路面を蹴りながら旋回を強めていく

 続いて訪れたのは北部にあるモンマルトルの丘。今から1世紀以上前の1898年、ルノーの創始者ルイ・ルノーが自作のトランスミッションを積んだ自動車でクリスマスイヴの日に坂道を勢い良く駆け上がり、その場に集まった人々から売って欲しいという声が殺到。自動車会社の設立を決意した場所でもある。

 ここでのトゥインゴは、そのときのエピソードを思い出させるような走りだった。やはりリヤエンジンならではのトラクション能力の高さが効いている。ここも石畳が多く、グリップでは不利なのに、アクセルペダルを踏み込むとリヤタイヤにぐっと力が伝わり、その力を石畳に確実に伝えてぐんぐん坂を登っていく。頼もしささえ感じる走りっぷりだ。

 モンマルトルの丘での撮影を終え、続いて向かったのはセーヌ川の反対側、つまり左岸にあるサンジェルマンデプレだ。教会を中心として発展したこの地区は、長い歴史を持つカフェが立ち並び、哲学者や作家、映画監督などが議論を戦わせた場所として知られている。

 このあたりはクルマがやっと1台走れるぐらいの幅しかなく、交差点を曲がることさえひと苦労という認識だったが、ここで新型トゥインゴの持つ機動性が遺憾なく発揮された。軽自動車並の小回り性能とコンパクトなボディのおかげで、どこにでも入っていける。高めのアイポイントと見切りの良いボディも味方になってくれる。パリをより深く知ることができるクルマという側面も、新型トゥインゴは備えていた。

 迷路のようなサンジェルマンデプレの裏道を出て、広い道へ。ここで加速を味わってみる。ターボは前にも書いたように、低回転から扱いやすいトルクを発生してくれるので、アグレッシブなパリの流れの中でもストレスは感じない。EDCの的確なギヤセレクトも貢献しているだろう。加速力そのものも俊敏と呼べる。

 凱旋門のラウンドアバウトなど、一瞬を争うような状況では、マニュアルモードを選べば良い。基本的にMTと同じになるから、周囲のクルマと堂々と張り合える。セレクターレバーの根元にあるボタンで選択するエコモードは、レスポンスが穏やかになるものの、東京よりもはるかに速いパリの流れに楽勝で乗れる。

 自然吸気MTのブルーのトゥインゴに乗り換えると、ターボEDCと比べてトルクの細さを痛感する。でも右手でシフトレバーを的確に操り、回転をある程度のレベルまで上げれば、周囲の流れをリードできることにまもなく気付く。そんなシーンでありがたいのは、高回転までエンジンを回しても静かなことだ。リヤエンジンのメリットだ。しかもその音質は良い意味で3気筒らしくない。シフトレバーのタッチも予想以上に確実で、シフトワークを楽しみとして感じられるタイプだった。

 そしてハンドリング。といってもパリで試せる部分は少なかったけれど、リヤエンジンらしさは感じられた。Aセグメントの実用車だけあって、パワーステアリングのレスポンスはそれほどクイックではないが、舵が効いてからのノーズの動きはとにかく軽い。スッスッと向きを変えてくれる。そして立ち上がりでアクセルペダルを踏み込めば、リヤタイヤがぐっと踏ん張り、路面を蹴りながら、旋回を強めていく。前輪駆動とは明らかに違う感触。量産車としての安定感とリヤエンジンならではの個性を、最適のポイントで両立させたチューニングだと思った。

 撮影の合間にパッケージングをチェックしてみた。リヤシートは、身長170㎝の自分が前後に座った状態で、ひざの前には10㎝ほどの空間が残る。フロントシートの背もたれが窪んでいることが効いているし、足を置くフロアが斜めなので楽だ。頭上も十分に余裕がある。4人の大人が乗ってのドライブにも十分対応できるだろう。

 後方のラゲッジスペースも、下にエンジンがあることを考えれば低く、リヤシートだけでなく助手席も背もたれを倒してフロアを一気に広げることができるので、マルチパーパス性もこのクラスの水準に達しているという印象だった。

濡れた石畳という低μ路でも、RRのトラクション性能を活かしてボディはグイグイと前へ押し出される。まさにパリの、パリによる、パリのためのコンパクトカーと言えそうだ。

 ところで今回の3台は、シャシーのセッティングがすべて違っていた。サスペンションは水色がスタンダードなのに対し、赤と黄色は車高がやや低くなる、日本仕様と同じスポーティなチューニング。ホイール/タイヤは水色と赤が16インチ、黄色が15インチだった。

 つまり日本仕様に近いのは黄色のセットだったが、結論から言えばこれがベストだった。石畳ではもちろんスタンダードのサスペンションのほうがマイルドだが、路面からの衝撃を和らげる点では15インチのほうが効果的だと感じた。一方、高速道路での直進安定性は、車高をやや落としたサスペンションを装備したターボが上だった。パワーステアリングがターボではバリアブルレシオとなることも大きい。この仕様を選んだルノー・ジャポンの見識の高さに感心した。

 その高速道路では、今回はさほど遠出はしなかったので110㎞ /h制限の区間が多かったのだが、このスピードレンジではターボ、自然吸気ともに、Aセグメントとは思えないほどの静粛性がありがたかった。エンジンが遠くにあることが大きい。EDCの的確なキックダウンも好印象だった。逆にMTは自然吸気エンジンの力がほどほどなので、ドライバーが的確な変速を行なう必要があった。逆に言えば、それだけMTの醍醐味が堪能できるということだ。

 途中で最後の取材を終え、ルノー本社に車両を返却すべく、再び高速道路に乗る。気が付けば乗り心地は、当初感じた硬さが取れて、ルノーらしいしっとり感を届けてくれるようになっていた。パリの外縁をなぞる環状高速道路ペリフェリークの、さらに外側にあるA86を西へ向かい、途中でルーアンから来たA13に乗り換える。道はまもなく下り坂のカーブの連続に変わっていく。

 視線の先にはセーヌ川。その向こうにはパリの街並みが広がる。小さなクルマだからこそ、1週間よく駆け抜けてくれたという気持ちがこみ上げる。そしてこれでお別れかと思うと寂しさが募る。もっと走り続けていたいという気持ちを日本仕様に託して、トゥインゴと僕はセーヌ川を渡った。

ニューモデル速報 インポートシリーズ Vol.57 ルノー・トゥインゴのすべて

RENAULT TWINGO in Paris
パリが鍛えた本格コンパクト
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Designer Interview

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