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散々化石燃料を消費してきた罪滅ぼしの意味を込めて...【人生最後に乗るならこの3台/河村康彦】

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2015年に発売が開始されたトヨタMIRAI

人生で、あとどれだけクルマに乗れるだろうか。一度きりの人生ならば、好きなクルマのアクセルを全開にしてから死にたいもの。ということで、今回の企画では『乗らずに後悔したくない! 人生最後に乗るならこの3台』と題して、現行モデルのなかから3台を、自動車評論家・業界関係者の方々に選んでいただいた。本日は、自動車評論家の河村康彦さんに登場していただきます。

REPORT●河村康彦(KAWAMURA Yasuhiko)

1台目:トヨタMIRAI

「黎明期にかかわらず充分に使える量産型燃料電池車。今後の進化にも期待」

3分の水素充電でタンクは満タンとなり、650km走行が可能な燃料電池車。価格は740万9600円。2代目は2020年末から発売予定だ。

”現行車”のなかから、という縛り付きなので、さしあたりここで示すのは2014年末に発売をされた初代モデル。が、すでに前回の東京モーターショーで次期型のコンセプト・モデルが発表され、ボディサイズや新プラットフォームの採用による後輪駆動化といった具体的情報と共に、「2020年末の予定」と発売のタイミングまでが明らかにされている現在、興味の焦点がすでにそちらに移っているのは当然だろう。

例えば初期のパソコンがそうであったように、まだまだ”黎明期”にある未成熟なアイテムが、まさに「日進月歩」の勢いでリファインをされていくことは、これまでの歴史が証明をしていること。となれば、すでに初代モデルの段階で充分に使える製品とされていた世界初の量販型燃料電池車であるMIRAIが、今度は”商品”としてもますます魅力的なものへと一気に進化をしているであろうことは想像に難くない。

さんざん化石燃料を消費し、CO2を巻き散らかして自覚のある自分としては、その”罪滅ぼし”の意味もこめて最後はこんなモデルを選ぶのも悪くないと思う。それがまた、100%日本製という点も、もちろん誇りに思えるポイントだ。

2台目:アウディR8クーペ

「旧態依然(!?)な内燃機関の魅力には簡単にあらがうことはできない!」

アルミとカーボンファイバーを組み合わせたボディのリヤミッドに5.2ℓV10エンジンを搭載。620psの最高出力をアウディ謹製のフルタイム4WDで路面に叩き付ける。価格は3001万円。

MIRAIのような新世代パワーユニットの持ち主にも大いに興味はあるものの、それでも内燃機関が発する様々な味わいをこれまでさんざん知ってしまった身にとっては、「旧態依然」(...言ってしまった!)としたそんなメカニズムが発する情感豊かなフィーリングの魅力には、簡単に抗うことなど出来ない。

なかでも、燃費や騒音規制が加速度的に厳しさをます現在、典型的な”絶滅危惧種”と言わざるを得ないのが、大排気量で多気筒の高回転・高出力型エンジンの持ち主。となると、もはや「余命いくばくもない」という悲しいフレーズで紹介しなくてならなくなりそうな1台が、このモデルでもある。

かくも”貴重な心臓”の持ち主であるという理由と共に、個人的にこのモデルに大きな魅力を感じるのがその操縦安定性。5.2ℓという巨大なエンジンをミッドマウントするにもかかわらずトリッキーな挙動は一切示さず、一方でそんなレイアウトの持ち主ならではと言える敏捷さも損なっていないのは見事な仕上がり。

スーパーカー・マニアにはどうやら今ひとつ不評(?)らしいルックスも、個人的にはお気に入り。3000万円級の価格にはどうやっても現実感が伴わないものの、それでも「いつかは手に入れたい」という個人的ドリームカーがこのモデルなのである。

3台目:スズキ・スイフトスポーツ

「最後に多大なローンを抱えたくない...ならば、賢い落としどころか!?」

最高出力140psを発生する1.4ℓ直噴ターボを6MTで操る快感が、201万7400円で手に入る(6ATは208万8900円)。日本人に生まれて良かった、と思える1台。

世界の自動車消費地の1位と2位が、ともに”大きなクルマ”を好みとする中国とアメリカになって久しいこともあってか、このところ留まるところを知らないのが多くのモデルのボディサイズ肥大化。

それらを手掛ける一部の開発者は「乗る人の体格も成長しているのだからそれも当然」と言ったりしているけれど、今でも”昭和規格”のまま残された狭い道路を、毎日走らなければならない身にとっては迷惑千万なハナシだ。

年齢を重ねるに従って、大きな図体を操るのはますます億劫になるに違いないし、かと言って「小さいくせに広さばかりを競う、大同小異の軽自動車なんかに乗りたくない」...とそんな事を思った時、燦然たるスポットライトが当たることになるのがこの1台。

”走り”の実力は折り紙付きだし、「やっぱり最後はコッチでしょ」と思えるMT仕様もしっかり設定。そして何しろ、小回り性の高さと共に日本のどこにでもスイスイと行けそうなサイズ感が、大いなる魅力のポイントだ。

正直、”最後の1台”としては少々華に欠ける気もするものの、「最後に多大なローンなど抱えたくない!」といった切実な問題までも考えるならば、今のタイミングではこのあたりが、すこぶる賢い落としどころと言えるのかも知れない。

■河村康彦(モータージャーナリスト)

1960年東京生まれ。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストに。確かな運転技術を駆使して、自動車を冷静かつ的確に批評する。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員などを歴任。

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