【毎日更新】気持ち良いエンジンの3台を選ぶ(安藤眞編):マツダ3/ケーターハム・セブン/フィアット500 【気持ち良いエンジンならこの3台】マツダ3のSKYACTIV-Xエンジンは、回転フィールの精度感がものすごい!|安藤眞
- 2020/07/14
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MotorFan編集部

メカニズムに詳しい安藤 眞さんが、エンジン基準で選んでくれたクルマのベストはマツダ3。SPCCI(火花点火制御圧縮着火)の実用化に成功し、話題を呼んだSKYACTIV-Xエンジンを搭載したモデルだ。決して速さが秀でているわけではないが、濁りのない回転フィールが秀逸なのである。
TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)
1台目:マツダ3【エンジン:HF-VPH|SKYACTIV-X】
「クルマが糸で引っ張られているかのような美しい加速を見せる」

回転フィールの精度感がものすごく高いのが気に入ったポイント。レブリミットは6,500rpmと高い部類ではないが、そこに至るまでメカノイズの濁りや停滞感が発生せず、淀みなくきれいに吹け上がる。特に4,000rpmから先は、クルマが糸で引っ張られているかのような美しい加速を見せる。絶対的にはたいして速くはないのだが、これが実に気持ちよいのだ。
理由は恐らく、世界で初めて量産化に成功した予混合圧縮着火燃焼。圧縮圧力による温度上昇を利用して着火を行うため、4気筒の燃焼室容積を精密に揃える必要があり、シリンダーヘッド側の燃焼室を機械加工して精度を高めている。だから気筒間で発生するトルクのバラツキがほとんど無く、わずかな濁りさえ発生させずに回るのだと思う。

2台目:ケーターハム・セブン【エンジン:フォード製Sigma 1.6】
「公道で使い切れるパワーと、リニアなトルク特性」

どんなに官能的なエンジンでも、その神髄をたまにしか味わえないのではつまらない。公道で使い切れる程度のパワーで、なおかつリニアなトルク特性を持つものが良い。となると1.6L前後の自然吸気エンジンになるわけで、現在、新車で手に入るものといえば、ケーターハムSEVENのフォード製1.6Lシグマエンジンぐらいしかない。
最高出力は99kW(135ps)にすぎないが、発生回転数は6,800rpm、最大トルク発生回転数は4,100rpmと、今や希少となった高回転型だ。ボア×ストロークも79.0mm×81.4mmとほぼスクエアなので、高回転まで回しても「無理している感」がない。でもSEVENは270モデルで車重が540kgしかないから、1,080kgのクルマに270psのエンジンを積んでいるようなもの。
公道でも使い切れるというという点では、マツダ・ロードスターのP5-VPR型のほうがいいのかも。SEVENよりちゃんとした屋根が付いてるしね。

3台目:フィアット500【エンジン:312A2|TwinAir】
「おおらかな気持ちになれるバタバタ感。だが、疲れた時には乗りたくない(笑)」

正直言って、このエンジンを選ぶかどうかは少々迷った。「いつでも乗っていたいか?」と聞かれると、下を向いてしまいそうだから(苦笑)。
直列2気筒とのシリンダーレイアウトが生み出す振動とバタバタ音は、大型自動二輪のトライアンフ・ボンネビルあたりに乗っているかのよう。ちょっと古くささを感じるようなバタバタ感に包まれながら走っていると、スピードを出すとかハンドリングがどうだとか考えるのが馬鹿らしく思えてくるほど大らかな気持ちになれる。
ところが、夜遅くまで根を詰めて仕事をした後などは、この振動は、正直ツラい。特にエンジン回転数が1,500rpmぐらいまで落ちると、振動はステアリングにまで伝わって来るし、アイドルストップから再始動する際にも盛大に揺れる。それを楽しむ心の余裕がないときには、あまり乗りたくないかも知れない(苦笑)。

選者:安藤 眞(あんどう・まこと)
【近況報告】
新型コロナウィルスの蔓延で自転車通勤が注目されているとの由。45年来のスポーツバイク愛好家からアドバイスします。タイヤの空気圧管理とチェーンの注油をしっかりやるだけで、すごく軽く走るようになりますよ。空気圧は週に1回、タイヤの横に書いてある指定空気圧の範囲で入れること。チェーンの注油は月に1度か雨が降った翌日。エンジンオイルの余ったのとか、100均のミシンオイルで十分です。注油したら余分な油はボロ布でよく拭き取ってね。
【プロフィール】
国産自動車会社のシャシー設計部門に約5年間勤務の後、退職。建具屋の修行や地域新聞記者を経て、自動車ジャーナリストとなる。メーカー在職中はSUVの担当だったことから、車歴は最初の2台を除いてSUVかMPV。UBS55型ビッグホーン(いすゞ)のパッケージングとサイズを現代の技術で蘇らせたら、絶対買おうと思っている。
『気持ち良いエンジンならこの3台』は毎日更新です!
内燃機関は死なず! 世の中の流れは電動化だが、エンジンも絶えず進化を続けており、気持ちの良いエンジンを搭載したクルマを運転した時の快感は、なんとも言えないものだ。そこで本企画では「気持ち良いエンジンならこの3台」と題して、自動車評論家・業界関係者の方々に現行モデルの中から3台を、毎日選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)
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