乗り比べてわかった! 新型スバル・レヴォーグのオススメが断然「STI Sport」な理由とは?
- 2020/09/15
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安藤 眞
先代レヴォーグでも定評のあった走行性能だが、新型レヴォーグの進化は想像以上だった。サーキットで限られた時間の試乗でも、新型のポテンシャルの高さは存分に体感することができた。では、GT-HとSTI Spotのどちらがオススメか? 乗り比べてみての結論は、ズバリSTI Sportだ。その理由をご説明しよう。
TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO●SUBARU
新プラットフォーム&新パワートレーンの実力は圧倒的
かつて人気を博したレガシィツーリングワゴンの後継機種として日本専用に仕立てられたスバル・レヴォーグが、いよいよ第2世代にフルモデルチェンジ。発表発売は10月15日だが、8月20日から先行予約が開始され、早くも好調な受注が伝えられている。しかし、それもそのはず、スバルの最新技術を漏れなく搭載し、まさに「満を持して」のフルモデルチェンジだからだ。
最新技術その1は、2ステップ進化したSGP(Subaru Global Platform)。16年デビューの現行インプレッサで頭出しになった新世代プラットフォームに対し、構造用接着剤の塗布量増大と、フレームを先に溶接する“フルインナーフレーム骨格構造”を採用することにより、現行レヴォーグに対して静的な捩り剛性を44%、フロントの横曲げ剛性を14%、捩りの動剛性(固有振動数)を18%向上させている。
最新技術その2は、新設計された水平対向4気筒エンジン。従来型レヴォーグの1.6Lから1.8Lに排気量アップされただけでなく、シリンダーブロックや各パーツのレイアウトまでゼロから設計しなおした新エンジンだ。詳細は別項を参照いただきたいが、直噴リーンバーンの効果によって、最大熱効率は世界トップレベルの40%を達成。それでいて最大トルクは300Nmと、従来型より50Nm強力なトルクを発揮する。
最新技術その3は、運転支援システム“アイサイト”の一新。前側方にミリ波レーダーを追加して、交差点右左折時や出会い頭事故の回避・軽減を行なう新世代アイサイトと、そこに高精度3D地図データを加えることで、渋滞時ハンズフリー運転を実現したアイサイトXのふたつを用意する。
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STI Sportの電子制御ダンパーはスポーティにも快適にも走れる
“アイサイトX”のプロトタイプ車両試乗記については既報の通りだが、今回はサーキット(袖ケ浦フォレストレースウェイ)で現行型との比較試乗する機会を用意していただいたので、今回はそのインプレッションをお伝えしよう。
試乗した順は配車の関係で、1:電子制御ダンパーを採用する最上級グレードのSTI Sport、2:現行型STI Sport、3:新型のGT-Hグレード、となったが、評価する上では絶好の順番。なぜなら人間の感受性は、悪い物→良いものという変化より、良いもの→悪い物という変化に対してのほうが敏感だからだ。
新型のSTI Sportには、乗り心地や操舵応答、パワートレーンの特性を4段階に切り替えられる“ドライブモードセレクト”がついているため、もっとも穏やかな“Comfort”にセットしてスタートする。
ピットロードから本コースに出る際に気付くのは、車内の静かさと、転がり感の滑らかさ。停止からそこそこの加速をして本コースに出るのだが、エンジン回転数はそれほど高まらず、メカノイズもほとんど聞こえてこない。加速中でも同乗者と普通の声で会話ができる。
いくつかコーナーを回ってみて驚いたのが、姿勢変化の滑らかさ。一般にComfortモードというと、ブレーキングでは盛大にノーズダイブしてリヤの接地荷重が抜けたり、ハンドルを切っても大きくロールしてだらしなくアンダーステアが出たりするのが常だったが、新型のSTI Sportは、まったくそんなことはない。操舵の初期応答こそマイルドだが、ロールが落ち着いてからの切り増しにもきっちり付いてくるし、途中から腰砕けになるということもない。そもそもサーキットを走るようなクルマではないし、公道でクルマとやりとりしながらドライビングを組み立てて行くなら、Comfortモードでも十分、楽しめそうだ。
続いて2周目は、Normalモードに切り替えてみる。パワーユニットの特性はComfortと同じで、ダンパーとパワステの制御が少し締まった感じに切り替わる。という事前説明のとおり、ロール速度が少し抑え気味になるのだが、サーキット走行のレベルでは、あまり大きな差は感じられない。Comfortモードのできが良いからかも知れないが、ライン取りや速度の自由度が大きいサーキットより、狭いワインディングを走ったほうが、バランスの良さはわかると思う。
それ以上に驚いたのが、乗り心地の良さだ。サーキットだから基本的に路面は良いのだが、縁石を踏んだ際の突き上げは少ないし、日常的に使っても違和感はなさそう。これこそ、毎秒500回という頻度で減衰力が切り替えられる電子制御ダンパーの威力で、姿勢変化を抑えつつも、大入力があれば瞬間的に減衰力を落としてショックを緩和してしまう。これだけ乗り心地が良ければ、路面の荒れた公道でも我慢を強いられることはないだろう。
さて、規定の4周回を終え(最終周回はクールダウン)、従来型に乗り換える。ピットロードから加速しただけで、「従来型って、こんなにうるさかったっけ?」と驚いた。特に金属性のノイズが盛大に車内に侵入して来る。加速自体はきっちりするので「遅い」と感じることはないが、エンジン回転数が高めになるため、ゆとりという点ではずいぶん違う。
スタビリティの差も非常に大きい。新型は終始路面に張り付くように安定しているのだが、従来型は、つま先立ちで歩いているような不安定感がある。リヤのスタビリティが新型より低いし、操舵の手応えにも頼りなさがある。単独で乗ってもほとんど感じないのだが、新型から乗り換えると顕著に違う。グリップ限界付近ではそれなりに安定しているので、過渡領域で大きな違いがあるように感じた。新型と較べるとブレーキの利きも甘く思えるし、ブレーキング中にはステアリングの振動も伝わってくる。
GT-Hの完成度も高い。が、乗り比べるとSTI Sportの良さが光る
最後にまた、新型に乗り換える。今度は電子制御ダンパーの付かないGT-H。静粛性や滑らかさ、張り付くような安定感は、STI Sportと変わらない。減衰力はSTI SportのNormal相当だそうで、ノーズダイブや過渡ロールなど、大きな動きはうまく抑えられている。...のだが、最大の違いは乗り心地。STI Sportでは感じられなかった小さなコツコツ感が、終始伝わって来る。と言っても「乗り較べて初めてわかる」という程度なのだが、意外なことにサーキット試乗でもっとも大きな差が感じられたのは、操安性より乗り心地だった。
というわけで、お勧めしたいのはSTI Sport。「STIはマニア向けなんでしょ?」と誤解しているあなたにこそ、ぜひ試乗して欲しい。価格差は35万円ぐらいになりそうだが、支払う価値は十分にある。
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
スバル・レヴォーグ GT-H EX
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580[1570]kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
燃料タンク容量:63L
■エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ
■シャシー系
サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/45R18
■燃費
WLTCモード:13.6km/ℓ(社内測定値)
JC08モード:16.5km/ℓ(社内測定値)
※[ ]はGT-H EX。また、数値はすべてプロトタイプのもの。
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