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2代目ジムニー(JA71)と競技用トライアルバイク、ホンダRTL300Rで山を駆ける【クルマ×アウトドア 】 スズキ・ジムニー+トライアルバイク(RTL300R) 山でトライアルバイクと戯れる

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JA71型ジムニーで出かけよう。出かける先は、「山」。トライアルのために仲間と借りているクローズされた場所だ。競技用トライアルバイク・ホンダRTL300Rで久しぶりに走ってみる。
TEXT & PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)

RTL300Rを最も良く表現できるのは、真横からのショット。低いシート位置、大きく延びたリヤフェンダー。このスタイルだけ見ても、トライアルマシンがどのように進化してきたがが窺える。
斜めリヤからのRTL300R。跳ね上がったリヤフェンダーが特徴的である。ライダーの体重移動を楽にするために、フレームのメインチューブは限界まで下げてある。
フロント斜めから。クラッチレバーの赤いストラップは、手首に巻く。キルスイッチのシャフトに繋がっており、転倒時等、シャフトが抜けエンジンがストップ。出荷時は傾きを検知するセンサーがあり、転倒と判断するとエンジンは切れる仕様。

「RTL300Rの写真を撮らせてくれないか?」「いいよ。今度はこの日に山に行くからね」

「山」とは、トライアル仲間でお金を出し合って借りている、トライアルのためにクローズされた山を指す。現在、日本のメーカーで公道を走れるトライアル車は販売されていない。このRTL300Rも競技専用車両であり、当然、公道を走れないし、ナンバーも取得できない。このRTL300Rのオーナーは、僕の小学生からの親友で、自転車から始まり、バイク、クルマと一緒に過ごしてきたひとりである。僕は途中でトライアル車を乗ることはなくなったけれど、彼はずっとトライアルを愛し、走り続けている。知らない間に、トライアルの聖地スコットランド、SSDT(スコティツシュ・シックスデイ・トライアル)まで遠征していたこともある。

ガソリン容量は1.9ℓ。小さなアルミ製タンクが備え付けられている。
エンジンスタートは当然キックのみ。掛けるコツはアクセルを開けないこと。一度のキックでエンジンは始動してくれた。
次のセクションへ向かう。シフトアップしていくためクラッチレバーには人差し指が一本だけ掛かる。スローシャッターでの撮影であるが、流れる風景に対して、いかにバイクのサスペンションが有効で、安定しているかがわかる。
水冷4ストロークOHC4バルブ。排気量288cc。ボア×ストローク80.0mm×57.2mm。2020年モデルのRTL300Rはボアアップされ298cc。
ガードの奥にフレームに沿って縦長のラジエーターコアが見える。

僕自身、TL125、TL250、TY125等が手元にあった時期がある。家の周りには走る場所もあったので、トコトコと河原を走ったり、仲間達とセクションを作り練習をしたことも少しはある。全日本大会が開かれた早戸川。セクション名が付いていて、「まがい沢」、木立の中の「ウッドペッカー」、「鬼の洗濯岩」。「悪魔の階段」は日本人、全日本選手、誰もが苦労するセクションを、イギリス人、ミック・アンドリュースが子供用のTY80で難なくクリア。自然に出来たステアケース、採石場の名残のドラム缶。あ、多摩テックにはトライアル場があり、そこで大会にも出たことがある。結果は散々だったが、ビリではない。

リヤディスクカバーはMOTOPIECE(モトピエス)製カーボン。リヤディスクプレートはJITSIE(ゼットシー)製。レギュレーション対応するために変更。
シフトペタルは、セクションアタック中にギヤチェンジを行なうため、ダブルサスの時代に行なっていた、岩などに当たらないよう垂直に位置を変更することはしていない。

今、動画投稿サイト等で、トライアルの動画を観ていると、まったく当時の僕の知っているトライアルとは異次元である。当時はグリップをいかに得るか、言い方を変えれば、いかに地形に合わせて、バイクをトレースさせていくか、そうだった気がする。ところが今は、リヤのサスペンションの反発を利用して、自由自在にバイクを跳ねさせる(ホッピング)、そうホッピングと言う表現が近いのではないかと思う。

シートはリヤフェンダーと一体で作られているが、そこにクッション性の物は、いっさいない。立って乗る、少しでも体重移動の自由度が、トライアルマシンには要求される。
ブレーキ、クラッチレバーは、ZETA(ジータ)製ピボットレバー。転倒時に、反対方向に力が加わっても、ロックせず回転してレバーの破損を避ける構造になっている。

このリヤサスペンションがどういう乗り味なのか、最も知りたいところであったのだが、乗る前の僕の想像とはまったく違うものであった。反発を利用するだけのために、硬くはないのである。その上に、ホッピングはどちらかというと、クラッチ操作の方が重要だという。このプロリンクのモノサスは、僕程度の技量で、昔の乗り方しかできない者にとっても、確実に地面を柔らかくトレースしてくれる。それを越えた辺りで踏ん張るらしいのだが、僕の技量ではそこまでは確かめられるはずもない。この柔らかさの裏に、ダンパーがスプリングの反発をわざと制御しないような工夫もあるようだ。そのスプリングの反発を利用して、クラッチ操作でホッピングでセクションを越えていくのは、当然ながらライダーの技量である。

指などが入らぬように、装着されたフロントディスクプレートのカバー。これはRTL300Rのオリジナル。
リヤスプロケットは、スプロケット内に指が挟まらないように、レギュレーションに合わせてオーナーが自作している。

驚いたのは、やはり軽さだ。昔のダブルサスのトライアルマシンは100kg前後だったと思う。ところが、このRTL300Rは乾燥重量で、72.9kgしかない。。1/4の軽量化だ。低速、もしくは停車中、バイクをバンクさせていくと、トライアル車に限らず、あるところを超えると、いきなり重量を感じる場所がある。それがRTL300Rでは感じられない。車体の軽さに加えて、車体のバランスも良いのだろう。RTLの性能の限界はあまりに深く、僕ではそこまで到底到達ができない。

操作の軽さも、驚くほどだ。昔のトライアルでは、セクション中にシフトチェンジしない。ここは2速で行こうと初めから決めて入っていく。今はセクション中もシフトチェンジをしていくので、クラッチも驚くほど軽い。人差し指一本で操作する。ハンドルのグリップまで、クラッチレバーが当たるまで切らない。半分だろうか。スロットルも軽く、いかにこのエンジンのレスポンスが良いかがわかる。素早くパワー、トルクが出るので、2サイクルのモトクロッサーのように気を使う。微妙なアクセルワークが要求される。

このRTL300Rは2016年モデルで、モンテッサ ホンダS.A.が発売したCota300RRで使用したエンジンをRTL260Fに搭載したモデルであるが、フロントフォークのインナーチューブが、CotaはTech製の軽量アルミインナーチューブ軽量フォーク。RTL300RはHRC社内基準強度のため、ショーワ スチールインナーチューブフォーク。このふたつの違いは、素材に目が行きがちだが、どう乗るかによって好みが分かれるようだ。ショーワ製は地面に食い込んで行く乗り味で、Tech製はホッピングしやすいように、振ってあるイメージらしい。

お昼ご飯は彼の練習時間を確保しようと、なるべく時間を短くしてと、コンビニで購入。手抜きではない。とみ田冷やし豚中華、かき揚げ二八そば。さすがに、昔のように箸を入れると麺がくっついて、いっぺんに上がってきてしまう頃よりは、味もすべて大幅にアップしている。僕はここのシュークリームが大好きなのです。

最後に、メインテナンスについても少し話を聞いてみた。フロントフォークのオイル交換は年に3回。エンジン部、ピストン、ピストンリングの交換は年に1回。これは自分で行なっている。リヤサスペンションはオーバーホールに出しているとのこと。
「自分でメインテナンスするのは面倒だけれど、自分でやったバイクに乗るのはとても良いもんだよ」

バイクの話はそこそこに、昔話になっていく。○○と言う場所で、僕とT .Sが会っていたのを見たぞ~。と言う。ほとんど記憶がない。
「たしかに彼女は可愛くて、お付き合いしたくて話はしたんだよ。でも、高校受験とその後のそれぞれ違う高校、一度もデートすることなく自然消滅。元気かなぁ」
「お前、連絡先知っていたら教えてくれよ?」
「知らないけれど、そろそろ男も終りだぜ。今のうちに会っといた方が良いんでないの?」

山の向こうに陽が落ちていく。僕らは年齢的に、そんな時を迎えているのかもしれない。でも、こうして友と一緒にいられる時間はまだまだちょっと先まで、続いていってくれないかな、と願う。

トップの写真はじつは最後に撮った写真。最後にRTL300Rとスズキ・ジムニー(JA71)と記念撮影。なんだか気が抜けて、他のカットと違う色味。そう言えば、彼の前のトライアルマシンRTL260Fを撮影したのは、ちょうど7年前の9月の今頃。

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