ホンダ・フリードハイブリッドモデューロX | より雑味が少ない盤石の走りへ進化。だがワインディングではベース車と同じi-DCDの恩恵と弊害が明確に露見する ホンダ・フリードハイブリッドモデューロX 新旧比較試乗インプレ…変更箇所は少ないが効果は絶大なマイナーチェンジ。開発者の飽くなき“完璧”への執念すら感じる
- 2020/09/16
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遠藤正賢
ホンダのコンパクトミニバン「フリード」をベースとしたホンダアクセスのコンプリートモデル「モデューロX」が2020年5月28日、ベース車より約7ヵ月遅れてマイナーチェンジを受けた。
同モデルには1.5L直4直噴DOHC i-VTECエンジン+CVTを搭載する「フリードモデューロXホンダセンシング」と、1.5L直4アトキンソンサイクルDOHC i-VTECエンジン+「i-DCD」(7速DCT+1モーター)を搭載する「フリードハイブリッドモデューロXホンダセンシング」が設定されている。
今回はそのうち後者に新旧比較試乗。ホンダアクセス本社のある埼玉県新座市周辺の一般道と高速道路に加え、マイナーチェンジ後のモデルについては箱根のワインディングなどでも試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業、ホンダアクセス
現行二代目フリードは2016年9月に発売されたが、その頃よりファミリーカーとして走りの完成度は高く、乗り心地とハンドリングのバランスに優れていた。
それが故と言うべきか、2019年10月のマイナーチェンジでも、走りの変更点は多くなく、サスペンションのチューニングに関しても「変更する方向で開発は行ったが、結局元のままがベストということになった」(開発担当者)のだという。
【2019年10月マイナーチェンジの主な変更点】
・標準仕様の内外装をシンプルかつ落ち着いたものに変更
・クロスオーバー仕様「クロスター」追加
・ADAS「ホンダセンシング」を全車標準装備のうえ後方誤発進抑制機能を追加、ACC(アダプティブクルーズコントロール)の加減速制御を改善
・ガソリン車のCVTにブレーキ操作ステップダウンシフト制御を採用
・エンジンを三代目フィット後期型と同様の仕様にアップデートしWLTCモードに対応
・旋回から直進に戻る際の収れん性向上、旋回速度に対するアシストトルクの減少幅増大などEPS(電動パワーステアリング)の制御を改善
なお、フリードの「モデューロX」は2017年12月に発売。ボディ下面の空気の流れを整えて中高速域の操縦安定性を大幅に高める「実効空力」に基づいたエアロパーツ、四輪の接地性を高めるサスペンション、剛性バランスに着目したアルミホイール、上質感を高めたインテリア、といったモデューロXの定番メニューは、この時点ですでに実現されていた。
あらためてこの前期型フリードモデューロX、そのハイブリッド車に、ホンダアクセス本社のある埼玉県新座市周辺で試乗してみると、ベース車以上に路面の凹凸に対する挙動の収まりが早く、かつ突き上げも少ない極上の乗り心地が即座に体感できる。
だがその一方で、モデューロX各車の大きな持ち味であり、だからこそ強く期待する、矢のような直進安定性はやや乏しい。ミニバンが最も苦手な横風のみならず路面の凹凸に対しても、わずかに進路を乱しがちだった。
しかしそれ以上に気になったのは、専用のシート表皮と本革巻きステアリングホイールが、非常にツルツルとして滑りやすいこと。特にシートは、骨格とクッション自体がベース車と変わらず小ぶりでサイドサポートも乏しいだけに、その圧倒的な旋回性能に対するホールド性の低さが目に付いた。
では、マイナーチェンジを受けた、新しいフリードモデューロXはどうか。運転席に座った瞬間に誰しも体感できるのが、インテリアの進化だろう。ディンプルレザー&スムースレザー巻きステアリングホイールは、見た目こそ変わらないものの、その手触りは全くの別物。硬くツルツル滑りやすかったものが、手の平に吸い付くような柔らかさとしっとり感のある、スポーツモデルに相応しい本革に生まれ変わっていた。
またシートは、残念ながらヴェゼルモデューロXのようなセミバケットタイプにはならなかったものの、表皮がプライムスムース×スエード調となり、劇的に滑りにくくなった。しかもこの表皮が1列目のみならず2列目、3列目にも用いられているのは、同乗者にとっても喜ばしいことだろう。
なお、テスト車両は6人乗りの2列目キャプテンシート仕様で、そのシートアレンジ機能は前後スライドと背もたれの前倒しに留まるため、大きな荷物を積むのはやや苦手。だが、2列目がダブルフォールディング機構付きのベンチシートになる7人乗り仕様も設定されているので、アウトドアレジャーに出掛ける機会が多いならば7人乗りを選ぶのをオススメする。
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