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日産ラシーン(1994-2000)”普通のクルマ”を極めた非凡なクルマ【週刊モーターファン・アーカイブ】

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ラフロードを難なく軽快に走るラシーン。フロントグリルとフェンダーに食い込んだ薄型ヘッドライトは、デザイン・設計・生産いずれの部門も特にこだわって実現した、まさにラシーンの"顔”だ。

実力重視の曲線的なフォルムが流行っていた90年代中頃、その流行の真逆を行く特異なスタイルで登場した日産ラシーン。その目指した所はパイクカーでもライトクロカンでもない”普通のクルマ”だった。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

レポート=遠藤正賢(90年代国産車のすべて より 2011年刊)

 1993年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「ラシーン」が好評を得て、車名も形もほぼそのままで市販化されたのは、1年後の1994年12月。バブル崩壊後のRVブームの中で、初代トヨタRAV4が同年5月に発売されたこともあり、オンロードの街中でも使いやすい、乗用車ベースの「ライトクロカン」に注目が集まっていた。

 そのため、このラシーンも駆動方式は4WDのみ、最低地上高は170mmあり、背面スペアタイヤやグリルガードも設定されていたために、そうしたライトクロカンのニューモデルと見る向きは少なくなかった。

リアハッチは上下分割式で、上側だけで開ければ狭い場所でも簡単に荷物が積める。下側は大人2人が座れるベンチとして使用可能。前後席のドアは開口部が広く、乗り降りは非常に楽だ。スペアタイヤは、実はテンパータイヤを背負っている。

 また、日産が80年代後半にBe-1、パオ、フィガロ、エスカルゴといった、スタイル命の「パイクカー」を次々リリースし、いずれも一世を風靡したのは今なお有名な話。ラシーンもほのぼのとしたボクシーな内外装が極めて強烈な個性を放っていたため、良きにつけ悪しきにパイクカーの一種に括る人は多かった。

 だがラシーンはライトクロカンとして作られたわけでもパイクカーとして作られたわけでもないという。「クルマではなく乗る人自身が主役になれ、日常生活の中で扱いやすい"普通のクルマ”が、これからの時代に求められるクルマの姿ではないか」という日産の先行開発部門が考えた末に、具現化されたものだった。

機能的で操作しやすい、直線基調のT字型インパネ。パネル同士のズレが目立ちやすい造形でもあるが、製造品質は高く、合わせ目のラインがキレイに揃っている。

 そんな”普通のクルマ”を目指したラシーンには、乗る人に無理や我慢を強要することがない。背面スペアタイアがない状態での全長が3980mm、ルーフレールやサンルーフがない状態の全高が1450mmという小柄なボディながら、フロントガラスの傾斜角は39度、サイドウインドウも垂直に近いレイアウトのため、室内は圧迫感がなく、実寸上も広い。やや高めの着座位置とスクエアなボンネット形状も相まって視界は広く、車両感覚も非常に掴みやすくなっている。

 エンジンは当初1.5ℓのみの設定で、後に1.8ℓや2ℓも追加されているが、いずれもピークパワーや最高時速を追わず、街中を普通に走るのに扱いやすいフラットなトルク特性を狙ったもの。さらに前述の4WDと高い最低地上高もあり、多少のラフロードなら気兼ねなく走ることが可能だ。

チェック柄をメインにヘリンボーンや幾何学調など様々な柄が設定された前後シート。
サイズは大きくホールド性も高い。

 また価格も、7代目サニーや4代目パルサーのコンポーネンツを旨みに流用することで、デビュー当時157.0〜219.8万円という、手に届きやすいレベルに抑えられていた。

 このように”普通のクルマ”として非凡なまでの資質を備えていたラシーンは、6年のモデルライフを全うしたロングセラーに成長。安全基準の改正に伴い、2000年8月に惜しまれながら生産を終了するが、それから10年以上たった今でも人気は高く、コンパクトカーながら中古車市場で80万円近い値札を下げることも少なくない。そして新車市場も、扱いやすく室内が広いコンパクトカーが全盛期。「これからは”普通のクルマ”が求められる」というラシーン開発陣の読みは、まさに当たっていたのだ。

第156号 日産ラシーンのすべて(1994年12月発売)

SPESIFICATIONS:ラシーン タイプ2

【発表】1994年12月12日
【価格】196.3万円(当時、税別)
【寸法・重量・性能】
全長×全幅×全高:4115×1695×1515mm
ホイールベース:2430mm
最低地上高:170mm
車両重量:1210kg
【エンジン】
エンジン種類:直列4気筒DOHC
総排気量:1497cc
最高出力:105ps/6000rpm
最大トルク:13.8kgm/4000rpm
10・15モード燃費:12.8km/ℓ
【走行伝達装置】
トランスミッション形式:4速AT
駆動方式:4WD
サスペンション前:ストラット
サスペンション後:パラレルリンクストラット
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後:リーディングトレーニング
タイヤ・サイズ:185/65R14 86S
最小回転半径:5.2m

日産ラシーンの数少ないライバル(!?)

”普通のクルマ”のあるべき姿を追求した結果、極めてオリジナリティの強いスタイルを手にしたラシーンに対し、スプリンターカリブはもはや3代目。あくまでセダン派生のステーションワゴンだ。しかし歴代カリブがそうであるように、3代目もまたリヤクオーターガラスが独立したやや風変わりな外観に、ポップで明るい柄のシートを備え、さりげないながらも決して商用パンにはない、乗用ワゴンならではの個性を備えていた。その点では、3代目カリブはもっとわかりやすい意味で”普通のクルマ”だったといえるだろう。なお、欧州仕様では、 カローラWRC同様の丸目ヘッドライトを採用。これは後に日本でも、99年4月に「スブリンターカリブ ・ ロッソ」として追加発売されている。

モーターファン別冊 その他のシリーズ 90年代国産車のすべて

■10~20年前のクルマに感動しよう!
 80年代という時代は、非常に興味深いクルマがふんだんに登場し日本の自動車史に名を残すモデルが目白押しでした。そこには80年代後半にむけて興ったバブル経済の影響も少なからずありました。逆に90年代はバブル経済の崩壊が代表的なキーワードとなることもあり、あまり良い印象がありません。同様にその当時のクルマもそれほどインパクトがあった記憶がないのです。しかし、情熱だけで押してきた80年代に対して、90年代は80年代に並行して行われていた技術開発が開花した時代でもあったのです。実は「クルマはこうあったらいいな」という思いが結実したのが90年代だったのです。そして興味深いのが、これらのクルマの多くは現在でも中古車市場で販売されている点です。程度は保証の限りであはりませんが、興味を持てたら自分のクルマにしてみるのも面白いかもしれません。

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