火曜カーデザイン特集:新型プジョー208のデザインをみる 新型プジョー208のデザインは、魂を得た、無機質アンドロイド!?
- 2020/12/22
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CAR STYLING編集部 松永 大演
今回は新型プジョー208のデザインについて紹介したい。ここでは数ヶ月前に、「モーターファン別冊 プジョー208のすべて」のデザインインタビューの執筆に当たって、208・2008プロジェクトデザイン統括責任者のヤン・ブレル氏に話をうかがったのだが、その時のこととレポートを振り返って今なりの感想を織り込んで行こうと思う。
大人気、高評価となった新型208を支えるデザイン
現在の新型208の評価はうなぎ上りといってよく、すごく高い評価が与えられている。それはその質こそ違えども、205登場時のあの歓喜を思い出すものだ。
特にその高い評価は、ハンドリング、乗り心地に与えられ、またエンジンフィールにも及ぶようだ。
そしてまたデザインについても高い評価を得ている。自分自身も初めて見たのは、2019年3月のジュネーブショーだったが、その時の感動は今でも忘れない。これは売れる! と直感したものの、そこには、華やかさだけには止まらない“強い何か”を感じさせるものだった。
一つ大きく変わったのは、GT Lineのヘッドライトを見るとわかるのだが、これまでは光源に球体のバルブがある、いわゆる眼を模したものだった。LEDを用いても、どちらかというと眼のイメージを大切にしてきたと思う。しかし新型208では様々なLEDを用いられるようになって、光源の形が3本ラインと丸型のコンビに代わり、眼とは違う存在に変わってきた。
デザインにおいてこの点は大きく、フロントのデザインを動物的造形とは異なる表現を求められるようになってきたと思う。これまでも、眼ではない表現をしたモデルも登場してきているが、その中でも無機質的なバランスの良さが生まれてきたように思う。
逆にいえば、208の中でもアリュールやスタイルでは、LEDながらも一般的な眼をイメージするようなヘッドライトを用いているが、こちら妙に生々しい印象ともなっているともいえる。
そして全体的なプロポーションの良さも魅力だ。まずはすぐに205の3ドアモデルをイメージしたのだと感じながらも、違うのが205はクラスレスを主張したかったのか、FFらしいプロポーションというよりは水平な安定した形を狙ったようだった。何よりも安定感が魅力だったのだ。
しかし、対する新型208は、プロポーション的に前進したスタイルとなっている。くさび形ということではなく、全体のフォルムが前寄せの形なのだ。これは407くらいから見られる傾向なのだが、FFらしさ、フロントのエンジンや駆動輪から生まれる“力感”を造形としている。また動的バランスとしても、多めのフロント荷重を意識しているのではないか? と思える節もある。
このデザインバランスに関してブレル氏は、
「確かに、前傾したスタイルを意識しているという面はあります。バランスとして、パワーを感じさせるプロポーションを採っているのは事実です」という。
とはいえ、この新型208はこのプロポーションと併せて、デザインの新たなフェーズに入っている。それが、フロントの水平なボンネットと傾斜を抑えたフロントウインドウだ。
206時代からボンネットはフロントウインドウと、徐々に一体化するような面になってきていたが新型208で完全に新たな造形となった。
生活感のないハングリーな造形
そんな特徴とともにデザイン上のポイントは、フロントに力を傾けるバランスを取りながらも、トラディショナルなボンネットを表現できたことだろう。2008にも通じる形となるが、結果的にリヤドアが小さくなりがちになる。しかし、後席の乗降性を確保するため、ドアの開度を広げるなどの工夫がなされているという。こうしてまでも、表現したかったのがキャビンの小ささと、明確なボンネットの存在感だ。その狙いが上質さだ。
新型208の多くのレポートで「Bセグメントとは思えない」という表現が用いられているが、主なものは乗り心地であったり、ハンドリングであったりといった部分だ。その狙いはデザインにも通されており、この手法によってより上質に見えるデザインをも実現した。
とりわけ小さなBセグメントであれば、デザインは機能をより拡張して見せるのが役割といってもよかった。「室内が広そう」だったり、「扱いやすそう」「便利に使えそう」といったものだ。
しかし新型208は、そういった生活感をできるだけ排した印象だ。生活感がないといえばクーペなどは代表格だが、クーペはリヤドアがないことや後席が狭い、トランクが小さい、といったことが生活感のなさを美しさとして表現している。
ところが208は、生活の要素をしっかりと備えながら、生活感を消すという形をとっているように見える。ブレル氏は、
「実は大きな課題のひとつが、ディテールの作り込みでした。どこかのタイミングで、ある一部に執心したということではなく、とにかく全工程においてディテールを作り込むことで品質を高め続けました。例えばフロントフェンダーからボンネットに続く面を、単に緩やかなRで構成することはできますが、そこに削ぎ取る彫刻的な要素を取り込むことによって、プジョーらしさの表現や面質を高めることを行なっています。それも、ただ削るだけではなく、どう削るべきか、ということを実に深く検討しました」という。
余計なものを削ぎ落とした造形というだけでなく、どう削ぎ落とすかによって芯にある骨格の強さを表現している。面圧の強さではなく、骨の強さ、いわゆる“細マッチョ”の魅力をうまく表現しているようだ。そんなところに、豊かさだけでないハングリーさを見せているとも言えるのではないだろうか。
冒頭でヘッドライトの造形では生き物ではない表現としながらも、ボディ造形にみる筋肉質さとのマッチングがうまくできているのが面白い部分。この辺りにアンドロイド(人造人間)的な魅力をちょっと感じてしまうのが、新生プジョーの方向性なのかもしれない。
またこうした視点からすれば、常識はずれとも言えるインテリアの造形は、まさに異次元感以上に別次元感さえも感じさせるもの。その点、アンドロイドとの融合はベストマッチとえるかもしれない。
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