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いすゞ・ベレット1600 GTR(1969)さりげなくコイツを転がせる男になりたかった【週刊モーターファン ・アーカイブ】

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今ではトラックメーカー一筋となったいすゞだが、60年代から80年代の前半までは魅力的なスポーティカーも投入していた。その中でも傑出した高性能モデルがベレットGTRだ。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

解説●渡辺 陽一郎(60年代国産車のすべて より 2012年刊)

 60年代のスポーツカーには、スカイラインGT-Rを筆頭に、モータースポーツと密接に関係する車種が多かった。ベレット1600GTRも同様だ。この時代のいすゞは、ほかのメーカーと同じくモータースポーツにも積極的に参戦しており、ベレット1600GTRはレーシングマシンの市販版に位置付けられる。

 ベースとなったベレットの登場は1963年。ブルーバードやコロナのライバル車に相当するミドルサイズのセダンだったが、64年に2ドアクーペを投人する。l.6ℓエンジン搭載車は、OHV方式ながら「ベレット1600GT」を名乗り、クルマ好きの間で注目された。

ボンネットのつや消しブラックは、太陽の反射による疲労を軽減する狙い。多くのラリーカーやレーシングカーで採用されていたスタイル。1963年登場以来、周囲のハイパワー化に遅れを取ったが、このGTRで先端グループに追いついた。
小さく尻下がりのリヤビュー。現代の見た目の安定感を重視した尻のでかいクルマたちとは一線を画する。小さなホイールアーチと併せて、一見速そうに見えないクルマがすっ飛んでいくときに、ちょっとドラマ性を感じさせる。

 その後、いすゞは68年に1.6ℓのツインカムエンジンを積んだ117クーペを発売。このエンジンをベレットのクーペボディに搭載し、チューニングを施したレーシングマシンを「ベレットGT-X」として実戦投入した。鈴鹿12時間耐久レースで優勝する快挙も成し遂げ、市販版がベレットGTRとなった。

 直列4気筒の1.6ℓツインカムエンジンは、三国製ソレックスツインキャプレターを装着。最高出力が120ps(6400rpm)、最大トルクは14.5kgm(5000rpm)で、117クーペと同じ数値になる。タコメーターが装着され、イエローゾーンは最高出力の発生回転数を上まわる6500rpm以上。レッドゾーンは7000~8000rpmと高かった。

117クーペに搭載されたDOHCエンジンを移植。加速の鋭さと同時に、粘り強い低回転トルクが注目となった。見かけ以上のハイパフオーマンス。

 メーカーが公表した最高速度は190km/h。停車状態から400mまでの発進加速タイムは16.6秒になる。2ℓエンジンで160psを発生したフェアレディZ432でも、最高速度は時速210km、0~400m加速が15.8秒だったから、1.6ℓモデルでは優れた性能であった。970kgの軽いボディも奏効しただろう。

 外観も個性化が図られ、ボンネットは防眩のためにブラック塗装。バンパーの中央には大径のフォグランプが2灯備わり、タイヤは165HR13のラジアルだ。今にして思えば細身のタイヤだが、当時はラジアルというだけで憧れの対象だった。

 ベレットGTRは、当時街中で時々見かけることはあったが、やはりブラックのボンネットはかなり目立ち、排気音も勇ましかった記憶がある。

 東京地区の店頭売り渡し価格は116万円。同じエンジンを積んだ117クーペより56万円安いことも、ベレットGTRの魅力であった。

もはや死語ともなった、”スパルタン”な室内とはこのこと。決して簡素ではないが、走るための装備で埋め尽くされたタイトな世界だ。

SPECIFICATIONS(Bellett 1600 GTR 1969)

〈寸法重量〉
全長×全幅×全高:4005×1495×1335mm
ホイールベース:2350mm
トレッド前/後:1260/1240mm
車両重量:970kg
乗車定員:4人
〈エンジン〉
G161WK型 直列4気筒DOHC
ボア×ストローク:82.0×75.0mm
総排気量:1584cc
最高出力:120ps/6400rpm
最大トルク:14.5kgm/5000rpm
燃料供給装置:三国ソレックス(2連)
〈トランスミッション〉
4MT
〈駆動方式〉
RWD
〈ステアリング型式〉
ラック&ピニオン式
〈サスペンション〉
前・ダブルウイッシュホーン式、後・スウィングアクスル式
〈ブレーキ〉
前・ティスク、後・リ ーディングトレーリング式ドラム
〈タイヤサイズ〉
165HR13
〈最高速度〉
190km/h
〈価格・当時〉
116.0万円

ベレットの誕生は1963年

 こちらが発表当初のベレット4ドア。 当初より4輪独立懸架とラックピニオン式ステアリングを採用し、ファミリーセダンではあるものの一目置かれる存在となっていた。後の66年にリヤサスをリジッド式としたBタイプも発売された。

モーターファン別冊 その他のシリーズ 60年代国産車のすべて

「00年代国産車のすべて」「90年代国産車のすべて」「80年代国産車のすべて」「70年代国産車のすべて」と10年刻みで製作してきた雑誌ですが、いよいよ60年代版の刊行です。60年代とは日本車がオリジナルに目覚めた時代といってもいいでしょう。トヨタ2000GTを頂点として、いすゞ117クーペや日産スカイラインGT-R、日野コンテッサ、日産ブルーバード410,510そして2代目、3代目コロナと、様々な名が生まれたのも60年代です。これらのクルマを60年代のモーターファン誌の写真と記事をベースとして紹介しています。知らなかった事実に出会えるかもしれません。

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