ホンダNSX(初代)1990-2005 独自思想で作り上げ、世界をそれにならわせた新世代スーパースポーツ【週刊モーターファン・アーカイブ】
- 2020/10/01
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MotorFan編集部
1980年代、欧米などに遜色ない技術を持つようになった国内自動車メーカーは、圧倒的な好景気を背景に次は「ブランド」という得体の知れない領域に挑戦することになる。トヨタや日産が北米で独自のチャンネルを設けて「高級車ブランド」を確立しようとする中、ホンダはまったく違う方向でこのブランド確立に向かった。それは「スーパースポーツカーメーカー」としての立場の確立だ。NSXがその重い役を担うこととなる。
週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。ここでは当時NSXを購入した星島浩氏の「名調子」をお届けしたい。
解説●星島 浩(90年代国産車のすべて より 2012年刊)
運輸省自動車局で説明図を画<孫請けアルバイトに就き、専門誌在籍からフリーに転じて計40年。折しもホンダがNSXを開発。事前試乗と組立工場見学を機に購入を決めた。
アルミは骨格、ボディ内外板からシートパン、サスペンションまで広範囲に及び、部位に応じた合金数種と鋳造、押し出し、鍛造、プレスなど網羅。徹底した軽量設計と工法は後にも先にも「これしかない」と確信した。説明して下さったのは元本田技研社長の伊東孝紳さん。NSX開発総指揮とアルミ設計&組立を担当なさっていたと記憶する。
先行はアキュラNSX。新チャンネルの旗艦として北米で発売。お陰でLPL=上原繁さんに従いて仲間数人とアメリカ西海岸やラグナセカを走る機会に恵まれ、ニューモデル速報取材&執筆にも力が入った。
納車は1990年秋。代金一千万円は「清水の舞台」だった。アルミボディにふさわしい明るいシルバ—カラーで、5速MTではなく4速ATとした訳は「私も運転したい」カミさんへの配慮。小気味よいレバーの動きにMT魅力を認めながらもポルシェ・ティプトロニクが変速機の将来を暗示していたこともある。正直いうと「エネセックス」と聞こえる車名は好きじゃなかったが、事前試乗で指摘したリヤウインドーは曇らない二重ガラスに改まっていた。
4430mm×1810mm×117mm。低さは直前まで愛乗したプレリュードで慣れていたが、視界はより良好。キャディバッグを選ぶ必要があるものの、2人でゴルフ遊びに行けるスポーツカーなんかない。
上を見ればキリはないが、動力性能はV6自然給気で十分。発進&加速は1400kgを割る軽量と安定姿勢が物を言う。直進性に優れると同時に確かなハンドリングはカミさんにも「スポーツカーってこんなに運転しやすいの?」と言わしめた。湾岸道路などで内外の猛者に追われた際、悪い悪戯だが、先行車に近づいてブレーキをかけると、たいがい制動性能の違いに慌ててくれたのも軽量さと優れた安定性あればこそ。
わがマイカー歴で鈴鹿や関西、東北ほかドライブ機会が最も多くなったのもNSX。ガソリン代は気にしなかったが、困ったのは傷ついたアルミボディの修復だ。駐車中、隣の車がドアをぶつけたり、幼児がフロントボンネットを滑り台にする都度、異常に時間とカネが掛かった。
なにより、NSXにとっての不運はほどなくバブル崩壊に見舞われたこと。少量生産ゆえに多くのバックオ—ダ—を抱え、北米からの逆輸入も数えた超人気が下火に向かう。
そもそも利益を度外視したNSX企画である。不況下、追い打ちをかけたのがタイプRだ。ホンダのワルい癖なのだが、より高性能版が喧伝されればオリジナルNSXオーナーは立場を失う。私も次なるマイカーはHVだと観念して、まだ高値で売れる内にとNSXを手放した。
街中での扱いやすさとスポーツカーのいい所取り
幅広いサイドシル、 ヒップポイントの極度の低いシー ト、 そして 1200mmに満たないルーフ高と乗り込むだけで難儀に思われるNSXだが、 サイドシルに手をつくことを覚えれば乗降は容易になる。 足を完全に投げ出して操作するペダルは、 むしろ現代では奇異に感じるかもしれない。 アイポイントもきわめて低いものの、圧迫感を与えない低いダッシュボードは周囲を見やすくしている。
SPECIFICATIONS:NSX(初代標準)
全長(mm):4430
全幅(mm):1810
全高(mm):1170
ホイールベース(mm):2530
トレッド(mm) 前:1510
トレッド(mm)後:1530
車両重量(kg):1390
型式:C30A型3.0Q V6 DOHC VTEC
ポア×ストローク(mm):90.0×78.0
総排気量(cc):2977
庄縮比:10.2
最高出力(ps/rpm):280/7300
最大トルク(kgm/rpm):30.0/5400
燃料供給装置:電子燃料噴射式
燃料タンク容量(ℓ):70
1速:3.071
2速:1952
3速:1400
4速:1033
5速:0.771
後退:3.186
ファイナルレシオ:4.390
ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション前:ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後:ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ前:205/50ZR15
タイヤサイズ後:225/50ZR16
馬力荷重(kg/ps):4.82
最小回転半径(m):5.8
10モード燃費(km/ℓ) :8.3
東京地区標準価格(万円): 800.0
フェラーリ/ポルシェと「ガチ」て戦うため、ライバルとは一線を画した設計が随所に見られる
写真左はフェラーリ348tb、右はは964型ポルシェ911。実はホンダ内部での開発中の仮想敵はいずれも一世代前のフェラーリ328と930型ポルシェとしていたのだが、NSXが量産されるころにいずれも一世代新しくなっていた。
開発終盤にVTEC化されたエンジン
元社長も携わったオールアルミボディ
4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション
”人間優先”。世界に類を見ないパッケージングが「その後」を変えた
NSXでは従来スーパースポーツとは異なり、まず最初に居住空間を大きく採ることからパッケージングを始めた。このため同車の室内は非常に広々としており、また、視界も非常にいい。さらにはデビュー当初からATを設定して、イージードライビングを「悪」とはしていなかった。それでいて限界性能はすこぶる高かったため、」スーオアースポーツにおいても快適性と速さが両立することが証明され、その後の同ジャンルの流れを大きく変えていくこととなる。
広大なトランクも理詰め
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