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スズキ・ワゴンR(初代)1993-1998 小さいけれどちゃちじゃない高くて広い新ジャンル【週刊モーターファン・アーカイブ】

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バブル崩壊直後に新しい可能性を提案したのがワゴンRだ。豪華ではないが安っぽくはなく、それでいて広くて便利で快適。大きな可能性を持ったワゴンRは、クルマの流れを変えた1台だ。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

レポート=佐藤 幹郎(90年代国産車のすべて より 2011年刊)

 ミニバンのパッケージを軽に導入し、上級モデル顔負けの快適さと1ボックスに匹敵する室内の広さを実現したのがワコンRだ。93年の発売以来、2代目に切り替わる5年間で約90万台という大ヒット。トヨタ・カローラを抜くこともあったのだ。当時のカローラはまさに最強、どれほどの人気かおわかり頂けるだろう。またユーザーの80%を女性が占めるといわれる軽にあって、当初は男性が80%というのもトピック。当時は、軽は女性のクルマという概念がまだあったのだが、ワコンRはその概念を覆した。現在の軽自動車隆盛は、このワゴンRから始まったのだ。

左右非対称の1:2ドアを採用。目的はボディ剛性の確保と、右側に子供が飛び出さないこと。チェイルドプルーフの認知度が低かった?

 コンセプトは「男性的なスタイリングであることで、使用感も男性の趣向にマッチすること。次にタウンカーとして基本的な使い勝手に優れていること。小柄な女性ユーザーをさほど意識せず、身長165cm以上の人が腰をかがめず楽に乗り降りできる蓋座高。さらにワンタッチで後席が畳めて、前輪を外すことなくマ一ウンテンバイクが詰めるように工夫した広くてフラットな荷室。現代人の日常生活を気軽に楽しめるタウンカー」というものだった。

 コンセプトを基に実車を見て見ると、ワゴンRの特徴は、乗員最優先と合理的という点だろう。背の高いスクエアなボディは広い室内を実現。乗員を高い位置に座らせるため、視点が高く運転がしやすく、それでいて開放感もある。アップライトに座るから前席は前に出るので後席の足下も広い。軽とは思えないほど、いや軽だからこそ「こんなに広い!」という驚きをユーザーに与えている。また運転席を助手席よりも大きくし、中央に配置した非対称レイアウトを採用。大柄な男性が運転しても窮屈にならないようにしている。ボディカラーもダークグリーンがイメージカラー。商用車のイメージをさけるために、あえてホワイトは設定されていない。

フラットなラインを基調としながらも、きちんと個性が与えられている。後ろに向かってルーフが高くなるデザインが特徴的で、商用車に見えないようにしながらも、実用性の高さをアピールしている。

 広い室内のためのスクエアなボディも斬新だった。バブル期は軽も丸っこいデザインが流行していたこともあり、サイコロを想像させるスクエア・テイストは若いユーザーには新鮮。それでいてRVのように力強すぎずどこか愛嬌のあるスタイリングは、肩の力が抜けた、現在でいう草食系の先駆けといえるだろう。軽乗用車でありながらRVのようでもあり、1BOXのように広い。ル—フレールも備わり、形から機能が伝わるデザインだ。

 右側1枚、左側2枚の3ドア(後に4ドアも登場)も印象的。これは背が高いことからボディ剛性を確保するための3ドアであったのだが、後席が右側から降りられないので、路上駐車の際に子供が飛び出さないという効果を生んだ。目的と機能、そしてデザインが有機的に絡まったといえる。こうして新しいコンセプトを掲げながらも、部品共用化など、コストダ­ウンにも熱心だったことはスズキの慧眼だろう。開発当時はバブルの真っ最中で、3ナンバーの高級車が飛ぶように売れていた時代だ。しかし鈴木社長の号令の基、徹底した部品の共有化を実施。ワゴンRの部品共有化率は金額ベースでなんと70%だ。発売された景気崩壊後の日本にあって、コスト削減に大きく寄与。価格競争力も非常に高かった。

 それでいながら、多彩な収納を持たせたことは、魅力を一段と高めることに成功している。

左図はセルポとの共通部品。 シャシーはほぽ100%共用で、フロアは高さを変えるために上げ底。 前側は強化された波状鉄板で二重構造、 後側はウレタン成形パネルを強いて80mm嵩上げ。右図は路面からの高さで①がステップ高さ315mm②着座位置625mm③天井で1420mm。

 ワゴンRの定番装備となった助手席下のシートアンダーボックス(バーケツ)は洗車道具や濡れたものをし一まうのに便利だし、インパネトレイ一にはセカンドバッグが、グローブボックスにはティッシュボックスが入る容量を確保している。ドアポケットはA3サイズ、リヤクォーターポケットは、ドリンクが10本も入る。収納にも工夫が施されている。

 そんな時代を築いたワコンRだが、実は発売前の社内調査の評判は芳しくなく、発売直後の目標台数は月3000台。それを受けてか、青島主管は「現在はブームに乗った印象が強く、もう少し市場が落ち藩いてから判断したい。息の長い商品として愛されて欲しい」と語っていた。しかし結果的には大ヒット。エアロパーツやターボを搭載したより男性的な「RR」も追加され、軽の地位を向上させるのである。

 ワゴンRは、使いやすくて便利を解りやすく実現した、新世代軽のパイオニアなのだ。

号外 スズキワゴンRのすべて 1994年1月発売

SPECIFICATIONS:RX FWD(3AT)

【寸法・重量・性能】
全長×全幅×全高:3295×1395×1680mm
ホイールベース:2335mm
車両重量:760kg
10モード燃費:16.4km/ℓ
【エンジン】
型式:F6A
種類:直列3気筒SOHC
総排気量:657cc
圧縮比:10.5
最高出力:55ps/7500rpm
最大トルク:5.8kgm/5500rpm
【走行伝達装置】
駆動:FF
サスペンション前:ストラット
サスペンション後:トレーリングリンク式
ブレーキ前:ベディスク
ブレーキ後:リーディングトレーニング
タイヤF/R:155/65R13

モーターファン別冊 その他のシリーズ 90年代国産車のすべて

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■10~20年前のクルマに感動しよう!
 80年代という時代は、非常に興味深いクルマがふんだんに登場し日本の自動車史に名を残すモデルが目白押しでした。そこには80年代後半にむけて興ったバブル経済の影響も少なからずありました。逆に90年代はバブル経済の崩壊が代表的なキーワードとなることもあり、あまり良い印象がありません。同様にその当時のクルマもそれほどインパクトがあった記憶がないのです。しかし、情熱だけで押してきた80年代に対して、90年代は80年代に並行して行われていた技術開発が開花した時代でもあったのです。実は「クルマはこうあったらいいな」という思いが結実したのが90年代だったのです。そして興味深いのが、これらのクルマの多くは現在でも中古車市場で販売されている点です。程度は保証の限りであはりませんが、興味を持てたら自分のクルマにしてみるのも面白いかもしれません。

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