輸入Dセグメント・ステーションワゴン「伯仲の三つ巴」 ボルボV60 × メルセデス・ベンツCクラス × アウディA4「ライバル比較インプレッション」
- 2019/02/10
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青山 尚暉
機能性を追求してきたボルボ・ステーションワゴンの中核車種であるV60が新型にフルモデルチェンジし、さらなる流麗さと高級感を備えてきた。となると、質実剛健と例えられながら、同時に確固たるブランド力を確立するドイツ勢が俄然、競合車として視野に入ってくる。 その牙城に切り込まんとする新型V60。果たしてその実力やいかに。それぞれの魅力を再確認してみよう。
TEXT●青山尚暉(Aoyama Naoki)
PHOTO●神村 聖(Kamimura Tadashi)
ワゴンファン待望の新型プラットフォーム
ボルボと言えばエステート=ステ ーションワゴンをイメージする人たちも多いのではないか。1970年代のボルボ・シューティングブレー ク1800ESまで遡ることなく、 日本でも大ヒットした240や850エステートが当時の憧れの1台として記憶に残っている輸入ワゴンファンもまた少なくないと思う。
ところで、日本におけるワゴン人気は、輸入車のほうが高い。日本車では数少なくなったワゴンも、輸入車なら選び放題。その中心が日本でも大きすぎない、しかし存在感あるDセグメントのステーションワゴン。 ステーションワゴンを選ぶユーザー は、アクティブなライフスタイルを楽しみ、愛犬を含む家族と遠出する機会が多い人、SUVに流されない信念あるワゴンファン、そしてわが家のように家のクルマがずっとワゴンだったような人たちではないか。
そうしたワゴンファン待望の1台が、およそ7年ぶりに新しくなった、事実上の850、V70の後継車となるV60だ。XC90から採用されたボルボ最新の新世代プラットフォームを用いているのはもちろん、ダイナミクスと実用性の両立を目指す新型V60は、先代に対して全長こそ優雅なエステートとしてのスタイリングとラゲッジスペースの実用性を高め るため125mm伸ばされているものの、全高はワイド&ローを強調するマイナスmm、さらに全幅は日本からのリクエスト!としてマイナスmmの1850mm(V90比マイナス40mm)に収まっている。具体的には全長4760×全幅1850×全高1435mm。ホイールベース2870mmとなったのだ。
ここで注目すべきはリヤエンドの角度と、ヘビーワゴンユーザーが気になるはずのラゲッジスペース容量の拡大だ。リヤエンドは先代V60もV90も比較的寝ているデザインなのだが、新型V60はV90の45度に対して60度に立たせている(それでもスタイリッシュに見せるデザイナーの手腕は見事)。結果、ラゲッジスペース容量は529〜1441Lと、先代V60に対して約23%増。ワゴンとしての実用性(積載性)を大きく進化させているのだ。
日本仕様のパワーユニットはまず T5のDrive-E 2.0L直噴4気筒ガソリンターボ、245ps、35.7kgm+8速ATを導入。 2019年春にはツインエンジンと 呼ばれるPHEV=T6、T8(AWD)も加わる予定だが、先代V60にあり、ドイツ勢のライバル(メル セデス・ベンツとBMW)に用意されるクリーンディーゼルの設定はない。
ここでは新型V60のライバルとして、ドイツ勢ステーションワゴンのメルセデス・ベンツCクラス・ステ ーションワゴン、およびアウディA4アバントとの比較を、パッケージ、 ラゲッジスペースの使い勝手、先進安全支援機能、走行性能を中心に試みた。
VOLVO V60  T5 Inscription
▪全長4760×全幅1850×全高1435mm
▪ホイールベース2870mm
▪トランク容量529~1441l
▪2.0lDOHCターボ+8速AT
▪254ps/350Nm ▪FWD
▪599万円
まず紹介するのは今年7月に刷新されたメルセデス・ベンツCクラス・ ステーションワゴン。エクステリアはフロントまわり、リヤバンパーのデザイン変更にとどまるものの、インテリアでは・インチのワイドディスプレイや、メーターに12.3インチのCクラス専用コクピットディスプレイ、Sクラスと同じデザインのステアリングホイールなどを採用。見た目はともかく、中身は6500カ所が新しくなった新型なのだ。
さらにC200アバンギャルドには1.5L直4ターボエンジンにBSGと呼ばれる、エンジンが苦手な 低回転域のトルクをフォローするモーター兼発電機の48V電気システムを新採用。そんなCクラス・ステーションワゴンのボディは全長4702×全幅1810×全高1457mm。 ホイールベース2840mm。このクラスでは最もコンパクトなサイズとなる。
標準的なパワーユニットはC180の1.6L直4ターボ、156ps、25.5kgm+9速AT、上記のC200用の1.5L直4ターボ、184ps、28.6kgm+9速AT、およびC220dの2.0L直4クリーンディーゼルターボ、194ps、 40.8kgm+9速ATが揃う(FR)。
アウディA4アバントのボディはV60に近い全長4735×全幅1840×全高1435mm。ホイールベース2825mm。立体感と先進感あるエクステリアデザイン、未来感さえ漂うインテリアデザインに加え、 A4アバント1.4TFSIで1490kg、2.0TFSI sportで1550kgという軽量化を果たしたモデルでもある。標準的なパワー ユニットは1.4TFSIの1.4 l直4ターボ、150ps、25.5kg m+7速Sトロニック(2ペダルMT)、および2.0TFSIの2.0 l直4ターボ、190ps、32.8kg m+7速Sトロニックだ(FF)。
さて、新型V60の運転席に乗り込めば、スカンジナビアンデザインの素材と精密なディテールにこだわった、高級家具に囲まれたようなクリーンかつ美しささえ感じ取れるな上質な空間に満たされる。操作系は基本的にシリーズやXCと共通であり、ボルボオーナーなら迷うことなく走り出せるはず。ナビゲーションシステムやエアコン、オーディオ操作などを表示するタッチスクリー ン式9インチセンターディスプレイは縦型で、ナビの場合、進行方向をより遠くまで表示してくれるメリットがあり、多くの機能操作がボイスコントロールによっても可能となるから便利である。
MERCEDES-BENZ C180 Stationwagon Avantgarde
▪全長4702×全幅1810×全高1457mm
▪ホイールベース2840mm
▪トランク容量460~1480l
▪1.6lDOHCターボ+9速AT
▪156ps/250Nm
▪RWD
▪513万円
※欧州参考値
※撮影車はマイナーチェンジ前モデル
さらにVT5インスクリプションの運転席、助手席には本格的なマッサージ機能も完備。長時間、長距離の運転、ドライブも、経験上、快適そのもの。いや、マッサージで癒されるためにいつまでも乗っていたくなるほどだ。
後席はクラス最大の全長、ホイールベースのおかげで、これまたクラス最大級の前後方向のゆとりがある。 具体的には身長172cmのボクのドライビングポジション基準で、頭上方向はライバル2車と同等ながら、 膝まわり空間は23cmもあるからゆったり。シートの地上高は約52cmとごく低く、ボルボオーナーに多い愛犬家の愛犬自身の乗降にも適している。しかもエアコンは前後席4ゾーン式 で、後席センターコンソール背後に加え、Bピラー左右にも吹き出し口があり、後席の空調環境もクラスベストと断言できる。
Cクラス・ステーションワゴンの前席は、着座した瞬間からメルセデス・ベンツ一流の洗練された心地良さに包まれる空間だ。特にSクラスと同じデザインの ステアリングを握れば、そのグリップの適度な太さがそこはかとない安心感をも たらしてくれる。
後席はリヤドアを開けた時の乗降間口に関してはそれほど大きくはないものの、 着座すればフロアからシート座面までの高さ=ヒール段差が約32cmとたっぷりあり(V60は約29cm)、より自然で太股裏がシート座面に密着しやすい椅子感覚の座り心地が得られる点が好ましい。
アウディA4のインテリアデザインも実に洗練されている。特にバーチャルコクピットと呼ばれる、フルデジタルのクラシカルな円形メーターとフルスクリー ンビューのプログレッシブ表示が可能なメーターデザインの未来感は秀逸。まるでゲームの世界に迷い込んだかのようなビジュアル感、新しさ、機能が備わる。
後席はシートクッションの長さが 約51cmとたっぷりあり(V60約47cm、Cクラス約49cm)、また3ゾーンエアコンによって空調も文句なし。頭上方向、膝まわり方向のゆとりもV60並みにあるから、上級車のようにゆったりと着座することができる。
ワゴンとして大切なラゲッジスペ ースの使い勝手、機能はどうか。後席使用時の容量はV60が529L、 Cクラスが460L、A4が505LとV60が圧倒。開口部地上高こそ約64cmと、Cクラスの約60cm、A4の約61cm(Sライン/標準車は約63cm)と高めだが、開口部幅はクラス最大。フロア奥行きでCクラス、フロア幅でA4を凌ぐとともに、後席格納時の最大フロア長は約167cm と、A4の約169cmと同等。Cクラスの約160cmをリードする。
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