【MAZDA 3試乗記】マツダの「引き算の美学」ここに極まる
- 2019/06/25
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岡本 幸一郎
いよいよマツダ3に試乗することができた。今回、栃木県のGKNプルービンググラウンドでテストドライブを行ったのは、2.0Lガソリンのセダンと、1.8Lディーゼルのファストバックの、いずれも2WD。少し遅れてデリバリーの始まる鳴り物入りの「スカイアクティブX」は、また改めてとなるが、マツダが主張する新たな次元の「走る歓び」がいかなるものかをいち速く体感することができた。
REPORT●岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
さらなる高みに達した「人馬一体」
まず誰もが気づくのは車名をグローバルと同様に「マツダ3」に統一したことだろうが、5ドアボディを「ファストバック」としたのは、ハッチバックだとどうしても実用車っぽいイメージがついてまわるところ、これまでとは違う特別感を名前でも表現するためだという。
マツダデザインの哲学を追求し、魂動デザインを深化させた内外装デザインは、これまでにも増して印象深いものとなった。「引き算の美学」で不要な要素を削ぎ落し、ラインを入れずなめらかな面の抑揚だけで、これほど巧く動きを表現したことには驚くばかり。セダンとファストバックでまったく異なる個性を表現することができていることにも感心する。
同じく「引き算の美学」を体現したというインテリアは、Cセグメントとは思えないほどのクラフトマンシップを感じさせる質感の高さも印象的だ。これまでもなかなかの出来だったシートも、さらによくなった。各部の調整幅が拡大するとともに、太腿部を保持するためのチルト調節機構が新たに採用されたことに加えて、シートとしての基本性能が高まっている。
マツダがこだわるドライビングポジションもさらに改善され、より座った瞬間からしっくりくるように感じられた。外見からイメージするとおり、やはり後方視界はセダンのほうがだいぶよい。
指定された走行コースは、まず周回路とハンドリングコースを、日常の生活を想定した低速での動きのよさを確認したのち、それぞれ速度無制限のフリー走行を行なうというもの。
まず低速で路地をゆっくり走るような状況でドライブしただけでも、両者ともクルマの動きが極めて自然で一体感があり、身体がブレないことがわかる。そして高速道路に合流するように強く加速したり、コーナー手前で減速したときの一連の動きも非常に素直で、なんら違和感を覚えることはない。さらに同じコースを全開でフリー走行すると、ステアリング操作に対する反応が、まさしく「意のまま」であることに感心した。
マツダが掲げる「人馬一体」が、これまでよりもさらに一段高みに達している。欧州勢を含めても、ここまで気持ちよいハンドリングを持っているCセグメント車というのはほかに心当たりがない。
新型マツダ3のシャシーの特徴として、リヤをトーションビームとしたことが挙げられる。むろんマルチリンクにも美点はたくさんあり、諸事情により変更されたわけだが、最大のポイントは横剛性が圧倒的に高いことにあるという。
コーナリングの際、従来のマルチリンクは横力が入るとトーインとなり安定するのはよいのだが、そこから曲がるためには追操舵が必要になる。ところがトーションビームであればトーが変化しないので、よりリニアに曲がることができ、直感的にコントロールしやすい。レーンチェンジ等での揺り戻しはマルチリンクのほうがよかった気もしたものの、操舵に対して素直についてくる感覚は、圧倒的に新型マツダ3が上回る。
音の面でもボディに対する締結ポイントが少ないほうが有利な上、軽量化やコスト面でも都合がよいこともいうまでもない。乗り心地についても、パイプの真ん中をつまんだ独自の形状のビームを採用したことで、上下方向には適度にしなるため快適性も十分に確保できているという。むろん路面が荒れていればいるほどマルチリンクが有利なのだが、リアルワールドでそうした状況はそう多くないことも判断材料だった。
このコースは乗り心地の評価が難しいほど路面がきれいなので、いずれ公道でぜひ確認したいところだが、試乗した限り、Gの高まりとともに自然な感覚でロールしながら、しっかりとした骨格に支えられて4輪がキレイに接地している感覚が伝わってきた。それには、燃費、音、乗り心地に配慮し、コンタクトパッチは小さくして燃費を稼ぎつつ、ブレーキングやコーナリング時に荷重がかかると面積が増えるよう、縦バネをしなやかに設計したという専用タイヤも効いていることに違いない。
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