【試乗記:ホンダ・ステップワゴン】フェイスリフトとハイブリッドの新搭載で装いを一新!
- 2019/07/24
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岡本 幸一郎
アクセルを踏んだ瞬間に立ち上がる圧倒的トルク
さて、ハイブリッドのシステムとしては、すでにオデッセイやアコードに搭載されているものと共通と考えてよく、145㎰/17.8㎏mの2.0ℓ直4アトキンソンサイクルエンジンと、184㎰/32.1㎏mを発揮する高性能モーターを組み合わせた「i-MMD」を搭載する。
このハイブリッドステップワゴンを走らせてみて驚いたのは、とにかく速いこと! モーターが生み出すトルクによる加速の力強さはガソリン車を圧倒的に凌ぐ。アクセルを強めに踏み込んだ時の加速は、このクラスのミニバンの常識をはるかに超えるほど力強い。さすがはガソリン車でいうと自然吸気3.5ℓクラスの動力性能を持っているというだけのことはある。
一方、ゼロスタートではよほど意図的に大きくアクセルを開けない限り、モーターのみでスルスルと走り出す。そしてバッテリー残量が十分なら延々とEV走行のまま粘り、それがかなり高い車速域まで維持されることにも驚く。時折エンジンが掛かっても、低負荷状態になるとまた頻繁にエンジンが停止するので、いかにも燃費が良さそうだ。
ハイブリッドらしいショートタイプの専用シフトレバーで選べる走行モードはDとSのふたつ。Dレンジにセレクトすれば、市街地や常用域でのリニアな応答を。Sレンジでは軽快でスポーティな走りと1クラス上の加速レスポンス、リニア感を追求したと伝えられるが、まさしく狙い通りの仕上がりになっている。また、静かに走りたい時のためにEVモードのスイッチが設定されるのも、ハイブリッドならではだ。
そして動力性能ばかりでなく、エンジンが始動しても車内ではほとんど気にならないくらい、静粛性や振動が抑えられていることにも感心させられる。おそらくハイブリッド車では電気モノが発するさまざまなノイズに対する手当をした結果、クルマ自体の静粛性が引き上げられたのだろう。全体として、ここまで仕上げるために2年半の時間が必要だったと言うのも納得である。
フットワークの印象も、ガソリン車とハイブリッド車の違いは小さくない。ガソリン車のスパーダに比べてハイブリッド車は100㎏ほど重いことになるのだが、走り出しから加速が軽やか。ステアリングの操舵力も軽く、クルマの動きが軽快で一体感があるので、とてもそれほど重くなったような印象はない。既存のガソリン車に対して走り味がしっとり、しっかりとしていて、全体的に上質感がある。ステアリングフィールも、操作に対する応答遅れが小さく、中立からのクルマの動きもスムーズになっている。
こうしたハンドリングの向上は、バッテリーの搭載によって床下の重量物が増え、重心が低くなったことと、ハイブリッド車に施されたボディ剛性の向上、そしてフロントサスにアルミ製ナックルを採用するなどの専用チューニングによるもの。そして、「G・EX」にホンダのミニバンとして初めて採用された、パフォーマンスダンパーの存在も大きい。
ヤマハが開発したこのダンパーは、走行中の車体のゆがみや微振動を減衰させる効果がある。念のため述べると、装着により車体剛性が高まるわけではなく、あくまで発揮するのは減衰力である。パフォーマンスダンパーの効果が小さくないことはすでに他の装着車で何度か確認しているが、ステップワゴンでもやはりそれは同じだった。
せっかくクローズドコースなので限界コーナリング性能を試すと、あるところまではよく曲がるのだが、そこからは頑としてアンダーステアを示す。この特性はホンダが意図したもので、重心の高い車両の横転を防ぐために、敢えてよく行なっている手法。重心が低くなったとはいえ、高めであることには変わりないステップワゴンでは、安全上この設定のほうが良心的というわけだ。
また、ハイブリッド車には電動サーボブレーキが付くのだが、こちらもブレーキフィールがかなり自然に仕上がっているところもよい。これも既出のオデッセイやアコードでも感じた通りで、世のハイブリッドカーで少なからずブレーキフィールに違和感を覚えるものが多い中、ホンダが誇れる部分のひとつに違いない。
これまでのステップワゴンを振り返ってみると、2005年発売の低床フロアを実現した三代目は、箱型ミニバンとしてハンドリングを極めていたように今でも思う。09年発売の四代目では、商品性の面から低床をそのままに室内高を高め、乗り心地も改善された。
そして今回の五代目では、より快適性にも配慮した設定とされていて、それは後席乗員にとって大きな恩恵をもたらしている。そもそも現行の五代目ステップワゴンは、サイドウインドウを垂直近くまで立ててガラスやルーフの面積が広くなったことで上屋の重さ感が増したり、わくわくゲートの採用で車体後部が重くなったりと、ハンドリング面では難しい条件を抱えているのだが、それをなんとか克服してきた。そして新しいハイブリッドは、そのハンデをさらに感じさせない仕上がりとなっているのだ。
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