プジョー508───ファストバックサルーンとそのライバルに見る世界観 プジョー508をBMW3シリーズやアウディA4と徹底比較!〈ライバル比較インプレッション〉
- 2019/10/27
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森口 将之
ドイツ車と異なる走り味は健在
車両重量はガソリンエンジンを積む508GTラインが1510㎏、ディーゼルのGTブルーHDiが1630㎏、330iMスポーツが1630㎏、A4 45TFSIクワトロが1610㎏となっている。
排気量だけ見ると508のガソリン車だけ1.6ℓで見劣りするかもしれないのだが、実際は車体が軽いので2ℓは不要ということもあるのだろう。
たしかに旧型より軽い車体と8速になったATのおかげで、ガソリン車でも加速に不満はない。力強さではもちろんディーゼル車に軍配が上がるものの、唐突感はなくフラッグシップらしい落ち着きが感じられた。2台のドイツ車では、スペックで勝る3シリーズのほうがやはり強力だ。
A4は現行型になって、デュアルクラッチ・トランスミッションの発進時の唐突感がなくなったことが好ましい。
ガソリン車のエンジンサウンドは、排気量の小さい508が軽やか、A4が緻密、3シリーズが滑らかという印象の違いがあった。
508のディーゼルは加速時には適度に車内に音が響くものの、それ以外は2台のジャーマンプレミアム並みに遮音されており、厚めのガラスを使ってこの面に配慮したという説明が納得できた。上質感では遜色はない。
前輪駆動の508と後輪駆動の3シリーズ、4輪駆動のA4でハンドリングのキャラクターが異なるのは当然だろう。
3シリーズが新型で全幅が拡大した理由のひとつに、ホイールベース延長による間延び感を防ぐためのトレッド拡大がある。ドライブするとたしかに、ステアリングを切った際の前輪の踏ん張り感が伝わってくる。おかげで後輪駆動ならではの挙動に集中できるようになった。
現行A4はトランスミッション同様、ステアリングレスポンスも鋭さが薄れたので、自然にドライブできるようになった。フロントに縦置きしたエンジンの重さは感じるものの、その後のマナーは素直。そしてコーナー立ち上がりでアクセルペダルを踏み込むと、4WDらしいトラクションを感じさせつつ脱出していく。
この2台とは別種の楽しさをもたらしてくれるのが508のガソリン車だ。約100㎏の軽さが身のこなしの軽快感につながっていて、車格を忘れさせる楽しさがある。小径ステアリングに違和感を抱いた人も、このキャラクターには合っていると思うことだろう。
それでいて後述するしなやかなサスペンションのおかげで接地感も優れており、安心してベースを上げられる。ディーゼル車もそれほど重さが気になるというわけではなく、自然な身のこなしを演じてくれた。日本仕様には全車標準装備となるアクティブサスペンションのドライブモードをスポーツにセットすれば、リニアな感触がアップする。
そして乗り心地。A4は現行型が登場した直後に比べればしっとり感を増したものの、ストローク感が控えめであることは変わらない。3シリーズはデビューしたてであることに加え、試乗車が330iMスポーツということもありハードな印象で、今後の熟成に期待したいという感想を抱いた。
つまりこの分野は508の圧勝だ。段差や継ぎ目のショックを絶妙にいなし、乗員にはわずかな揺れだけを伝えてくるその感触は、極上の猫足という表現を使いたくなるほど。フランス車のフラッグシップにふさわしい乗り心地を味わわせてくれる。
だから山道ではスポーツを選んだドライブモードをコンフォートに切り替え、ドイツ車に肩を並べた高度な運転支援システムの助けを借りて、プジョーのフラッグシップならではの乗り心地に身を委ねたいと思うようになる。
スポーティなファストバックスタイルの内側は、むしろフランス車らしさを深めていた。どこまでも走り続けていけそうなこの乗り味があるからこそ、使い勝手に優れたハッチバックにしたんじゃないかと思うほどだ。トレンドになりつつあるフォルムを身につけていても、目指す道はドイツ車とはまったく違っていたのである。
同セグメントには他にメルセデス・ベンツCクラス。VWパサートなどが存在するが、こちら508と比べるとかなり保守正当派。おそらくは508とは大きく世界観が異なる。
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