アウディA4とBMW3シリーズを比較試乗! 〈プレミアムDセグメント・ステーションワゴン〉
- 2019/12/18
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森口 将之
ドイツ製プレミアムDセグメントの代表としてしのぎを削り合うAUDI A4とBMW 3series。かたやFFもしくはAWD、こなたFRと、駆動方式に違いはあれど、そうしたアイデンティティを活かしつつ、結果的には好敵手の関係となっている。今回は、欧州でも日本でも熱烈なファンを持つステーションワゴン、「アバント」と「ツーリング」を連れ出し、それぞれの魅力を探ってみる。
TEXT●森口将之(MORIGUCHI Masayuki)
PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)
※本稿は2016年11月発売の「アウディA4/S4のすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
「速さこそ正義」から脱却
ドイツ車は速さこそ正義という印象が強い。言うまでもなく速度無制限のアウトバーンの存在が大きく影響しているのだろう。グレード構成は基本的にエンジンの大きさで決まり、最大排気量のスポーツモデルが頂点に位置付けられることが多い。
しかしながらパリ協定が発効し、地球規模での温暖化対策が実施に移されようという中で、クルマの作り方や売り方が転換点に差し掛かっているのも事実。プレミアムブランドと言えど、ボディもエンジンも大きく、スピードは速いほうが素晴らしいという主張をアピールすることは難しくなりそうだ。
アウディはそんな状況を先読みし、積極的なダウンサイジングを導入してきた。2008年には先代A3に1.4ℓ直列4気筒ターボを搭載し、昨年はA1に1ℓ直列3気筒ターボ、A6に1.8ℓ直列4気筒ターボをラインナップしてきた。A3とA6は該当するセグメントで最小排気量となっている。
その流れがついにA4にも到達した。2016年10月、1.4TFSIが設定されたのだ。プレミアムDセグメントのセダン/ワゴンで、ライバルは1.5〜1.6ℓが最小だから、またも一歩先を行ったことになる。
搭載されるのはA3と基本的に同じ1.4ℓ直列4気筒ターボだが、最高出力は150㎰、最大トルクは25.5㎏mと、A3用より10㎰のパワーアップを果たすなどの差別化を図っている。アウディ伝統の縦置きとなることも違いだ。トランスミッションはSトロニックと呼ばれる7速のデュアルクラッチタイプで、前輪駆動となる。
現行A4に初めて乗ったとき、最も印象的だったのは、これまでAWDのクワトロとの間に明らかな走りの差を感じた前輪駆動車が、遜色のないレベルに引き上げられていたことだった。しかも現行A4は軽量化によって、前輪駆動車なら車両重量を1500㎏台に収めている。だからクワトロと基本的に同じ2.0ℓはオーバースペックではないかという気もしていた。
今回追加された1.4TFSIのスペックを見ると、確かに最高出力/最大トルクは2.0TFSIに劣るものの、車両重量も軽くなっており、アバントでも1490㎏をマークしている。後輪駆動のライバルで1500㎏を切ったワゴンはない。効率を追求するブランド、アウディらしいアプローチだ。
もうひとつ、1.4TFSIは価格にも注目だ。現行A4は発表当時、エントリーグレードであっても500万円を超えており、強気に思ったものだった。それがこの1.4ℓでは、セダンが447万円から、ここで紹介するアバントが476万円からとなっている。百万の桁が4になっただけで、印象が違うという人は多いはずだ。
インポーターとしては、日本上陸時のラインナップには間に合わなかったものの、当初からこの1.4TFSIの導入を考えていて、今回追加したという経緯かもしれない。遅れてきた真打ちと言えそうだ。
そこでここではライバルの1台、BMW3シリーズ・ツーリングと比較することで、A4アバント1.4TFSIの実力をチェックすることにした。となると3シリーズは、9月に発表された1.5ℓ直列3気筒ターボエンジンを積む318iがふさわしい。
ところが318iは試乗車両の都合がつかず、代わりに2.0ℓ直列4気筒ディーゼルターボエンジンを積んだ320dに乗ることになった。トリムレベルもA4はスポーツ、3シリーズはMスポーツと、やや異なる。なので真っ向勝負の企画とはせず、318iの走りを想像しつつも、3シリーズそのものの魅力との対比で試乗することにした。
明らかに異なる個性
エクステリアデザインについては、現行A4も日本上陸から半年以上経過しており、3シリーズに至っては4年目を迎えるので、おなじみの存在だと思う人が多いのではないだろうか。
しかし2台は似た者同士ではないことも事実である。A4のエクステリアは無駄なラインがなく、研ぎ澄まされた造形で、アバントとしてのフォルムの美しさを強調している。対する3シリーズは、彫りの深いボディサイドのキャラクターラインなどで、動きをアピールしている。方向性が違うのだ。
A4はきれいな形、3シリーズは勢いのある形を目指しているのではないかという気がする。多くのクルマがダイナミック&エモーショナル方向を目指している中で、インダストリアルデザインとしての美を追求したA4のアプローチが印象に残るのは確かである。
キャビンからも、エクステリアに通じる違いが読み取れる。現行A4のインパネは、全体的に低くなり、横方向への広がりが強調された。造形もシンプルになって、開放感が増した。旧型A4は3シリーズに似て、ドライバーを囲むような造形だった。つまりここでも方向性の違いが顕著になっている。
さらにA4は、メーターパネル内にナビゲーションの地図などを表示するディスプレイ機能も用意している。このあたりは、設計年次の新しさがもたらすアドバンテージだ。それでいてエアコンには、従来型のスイッチを残したりもしている。あらゆる機能をタッチパネルで操作させるのはスマートフォンと同じで注視する必要性が発生し、運転中の操作は危険が伴う。そんな状況を見据えた良心的な配慮を感じる。
センターコンソールで目立つのは3シリーズのパーキングブレーキだ。今では少数派になりつつある機械式のレバータイプなのである。これもまた生まれた時代を物語るディテールだ。また2台とも低めの前席に対し、コンソールは明らかにA4のほうが低い。前輪駆動か後輪駆動かという違いが、こんなところからも感じ取れる。これもまたキャビンの開放感に寄与している。
A4の前席は、低めの着座位置にもかかわらず厚みはあり、サポートはドイツ車としてはタイトだ。シンプルでありながら目の細かいファブリックが、緻密さを旨とするアウディらしい。3シリーズはMスポーツ仕様だったので、サイドの張り出しが派手だったが、座り心地はガチガチではなかった。
後席は、スペースそのものについては互角だ。身長170㎝の僕が座ると、ひざの前には15㎝ほどの余裕が残り、頭上はワゴンボディということもあって、空間的な問題はまったくない。ただしシートの角度はかなり違う。
A4アバントはアウディの伝統で、座面、背もたれともに深い角度が付けられており、両サイドの盛り上がりがないのに、身体が落ち着くのだ。ファミリーカーとして使用する場合、やや平板な感触の3シリーズ・ツーリングに対する優位点に数えられるかもしれない。
ボディサイズはA4アバント1.4TFSIスポーツが全長4735㎜、全幅1840㎜、全高1435㎜で、4645×1800×1450㎜の320dツーリングを高さ以外で上回る。ホイールベースもA4のほうが15㎜長い。
そのためか、荷室は奥行きでA4が上回るように感じられた。さらにこのスペースを覆うトノカバーは、ゲートの開閉と連動して後端がせり上がるA4のほうが、荷物の出し入れがしやすそうだった。
ではこの余裕のあるボディを、150㎰/25.5㎏mを発生する1.4ℓターボエンジンで満足に走らせることができるだろうか。結論から言えば、まったく問題なかった。
なによりも1500㎏を切る軽量設計と、無駄なく力を伝える7速デュアルクラッチ・トランスミッションが効いている。2000〜3000rpmも回せば周囲の流れをリードできるし、サウンドはアウディらしい緻密な音色で不快ではない。かつてのデュアルクラッチ・トランスミッションでは気になった発進の唐突感も姿を消してスムーズになった。わずか1600rpmでこなす100㎞/hクルージングは平和そのもので、この領域からの加速も難なく行なえる。
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