爆売れダイハツ新型ロッキーのルーツを四駆専門誌編集長が試乗!! 【ダイハツ新型ロッキー(とトヨタ・ライズ)爆売れ記念特別企画】ダイハツ初代ロッキーは、本格四駆だったのか? (後編)
- 2020/12/19
- MotorFanアーカイブ編集部
【粘りはイマイチ、しかしガッチリ】
お待たせしました。乗ってみます。自動車税区分から損した気分になる1.6ℓエンジンは、牽引や運搬作業といった農耕馬的役割に使うのでなければ燃費とパワーのバランスが良いはずだ。
ジムニーシエラの1.3ℓや1.5ℓも乗り味に優れるが、軽快さの裏返しでボディは狭く、造りも華奢と感じる向きも多かろう。そもそも軽の骨組みなんだから仕方ない。
翻って最初から登録車として生まれたロッキーは相応の体躯を持ち、重量増と引き換えにタフさを得ている。普及して欲しいクラスだったが、現在はカテゴリー消滅ときたもんだ。
乗用車のアプローズから流用のHD-E型エンジンは、吸気系を改良して中速域を扱い良くしている。実際に走らせると、高回転型だったり俊敏に吹けあがるのではなく、感触は重たげ。良くいえば安定型の実用重視だ。
それでも低速トルクは不足気味で、坂道発進では並みの乗用車よりも半クラッチを使ってやらないとエンストしてしまう。わかっていながらギリギリまで粘らせ、ストール寸前にポンと踏んでもアクセルのツキが今ひとつで、立ち上がりが間に合わない。
四駆としては小さな排気量で重たいタイヤを回すとはいえ、もう少し粘っても良かろう。エスクードが初代型のうちに2ℓ、2.5ℓ、ディーゼルターボと展開したのだから、ロッキーも1.8ℓくらい欲しかった。タフトグランの12R-J型のように、トヨタから供給を受けるのも手だったかもしれない。
つぎはぎ舗装の田舎道から林道程度での乗り心地は、意外なことによろしくない。特に後方からの突き上げが大きく、新ジャンルのクルマだと飛びついたユーザーは落胆したはずだ。
さほど硬そうに見えない板バネも、車重からすれば頑強きわまりない。乗り心地を狙ったフロントのトーションバーも、それに合わせた硬さに思える。
おかげで…というべきか、峠道ではホイールベースの短さとフレームのガッチリ感も手伝って小気味良く走る。速度を上げ過ぎると途中からグっと切れ込んだりして、ダブルウィッシュボーンなのに前後リーフリジッド車に通じるクセがあるのも、また四駆らしい。
【骨太四駆の本領】
スタイルからして期待できそうな障害地形に乗り入れる。外から眺めると、後足はそこそこ動いているように見えても、すぐに浮いて前進不能となる。前足の動かなさは覚悟していた。
トレッドの狭さを考慮しても、同じ形式のサスペンションを持つ古い三菱パジェロやいすゞビッグホーンより前後ストロークの総量は小さい。ボディ形状や重量など他の要素を抜きに考えるならロッキーの走破性は劣ることになるが、クロカン走行はそんな単純なものではない。ドライバーの心理面を含めての総合性能だ。
トルクとレスポンスが物足りないHD-E型の弱みは地形が荒れてくると顕著。高低差の少ない地形でもローレンジ1速固定の走りとなってしまう。それでも粘りが足りず、先を読んで右足を予測的に踏み込んで行かないと、直前の操作では手遅れになる。エンジンそのものが悪いのではなく味付けの問題だ。
もっとも、多くの自動車が排ガスや燃費対策で線が細い感触となった現在では、気にならないどころか我慢強い部類だろう。
そんなことだから、ジワジワ這ったり、障害地形をポンと乗り越えることは苦手だ。多少足が浮こうとも、早足でダダーッと駆け抜ける、ジムニー的な走りになってしまう。これはリスクのある操法で、骨太シャシーのタフさで帳消しと考えたい。
ロッキーらしからぬ(?)新しい試みとして、フルタイム4WD仕様が選べたことは前編で述べた通り。ローレンジなしの単速トランスファとされ、低速で這うことが困難な性格にトドメを刺すかのようだった。
これにはエピソードがあり、メーカーによるイベントで何台ものロッキーをオフロードコースに持ち込んだ時、公道から管理棟までの取り付け道路すら登れなかったという。コース管理人の奥方が運転を代わってコースまで移動されたそうだ。
担当ドライバーが不慣れだったことに加え、立ち往生したのは全てフルタイム仕様だったというから状況が見えてくる。
当時、ロッキー・ユーザーでクロカン派はごく少数だったと記憶している。フルタイム仕様の目的はアンチ・スピン・ブレーキのために前後軸間の直結駆動を解くことだったから、険しい地形に持ち込むモデルではなかった。
これらは煮詰められることなく廃止され、保守的な副変速機つきパートタイム式に一本化された。オフロードでは駆動力確保以上に、クラッチに負担をかけずゆっくり走れる“低速性能”が重要だから仕方ない。
エスクードとの走り比べはあまり意味をなさない。両車とも走破性が販売上の第一義ではないからだ。敢えてそれぞれの特徴を大雑把に記すなら、敏速に足が動いて地形の凹凸を舐めるように進み、意外なほど前進が止まらないエスクード。そしてある段階で必ず腹が着いて亀の子スタックに陥る。
ドタバタとしなやかさに欠ける足さばきながら、四駆らしい強行突破ができるロッキー。地形の「読み」もジープやジムニーに近い感覚で通用するが、彼らほど限界が高いわけではない。限界近くでギヤ比とかサスペンションストロークの問題が出てしまう。
同じ排気量でも、エスクードはブリブリ粘って抵抗に打ち勝てるように感じる。こちらもローレンジが低くはないが、早足走りに向いたサスペンションとマッチングが良く、そう感じる部分もある。
それでも総合的にロッキーの方がクロカン向けと思えてしまう。四角いボディは多少ぶつけても平気そうだとか、目線が高くて運転席からの眺めも四駆らしく、安心感を得られるからかもしれない。
どうもジムニーの優秀ぶりからエスクードを過大評価してしまうきらいがあって、コンパクトカーのようなスタイルでモーグルを走破すれば「さすがスズキ」と感心してしまう。同じ地形をロッキーが走るのは当たり前に見えてしまって、足が浮いたら「だらしない」とこき下ろしたくなる。デビュー当初の軽いキャッチコピーやCMの印象からすれば見事な健闘ぶりなのに。
【いまなら本格派】
ロッキーがより保守的で、もし開発費も掛けず前足までリジッド式の「ミニ・ラガー」であったなら、タフトグランの再来だった。現状では独立懸架の美点を発揮できていないようだから、頑固者に徹しても悪くなかったろう。乗用車としても悪路の道具としても中途半端感が拭えない点は、ダイハツ四駆のDNAのようだ。
ロッキーは全然ふざけてなんかいない。ラガー譲りの堅牢さや不器用さを残した部分こそが、エスクードのスマートさや、乗用車コンポーネンツのクロスオーバーたちに対して大きな魅力に映る。
前足がダブルウィッシュボーンというだけで軟弱呼ばわりされたのが平成初頭の四駆事情。打って変わってトヨタ・ランドクルーザーやメルセデスGクラスが同じ構造にして本格派なのだとアピールしている当世、ヘビーデューティの基準も変わったようだ。
現車を買い求めたオーナーは、何台もの本格四駆を乗り継いでいる。ロッキーを指名買いされたのは相応の理由はあるはずだ。
そのあたりを尋ねると、首都圏の排ガスに関わる法と条例(自動車NOx・PM法および自治体の乗り入れ規制)のクリアに加え、シャシーの真面目な成り立ちと信頼に足る要素を持っていることに尽きるという。
試走から5年が経った現在も、ロッキーはオーナー宅のガレージに、もう一台の愛用の日産Y61サファリとともに並んでいる。期待に応えられている証拠だ。初期高齢車の域に入り、部品調達も怪しくなりつつあるF300Sが、全国のユーザーに愛用されることを祈っています。
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