ホンダ・フィット | 目下の課題はデザインと走り。その解決策は中国とインドネシアにあった! ホンダ・フィットが販売不調!? その理由と復権の方策をオーナー視点で探る
- 2021/05/02
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遠藤正賢
2020年2月に発売された新型四代目ホンダ・フィット、発売直後の2020年3月以外は月間販売台数が1万台を超えておらず(自販連調べ、2020年2月~2021年3月実績)、同時期に発売されたトヨタ・ヤリスや、昨年末発売の三代目ノートに水をあけられている。
決して好調とは言えないその理由はどこにあるのか、過去に初代を2回所有し、その後歴代各車を試乗してきた経験も踏まえて考察。ヤリスおよびノートを抜きBセグハッチトップの座に返り咲くための改善策を提案する。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業、ホンダアクセス
コロナ禍、半導体不足、SUVブーム、トヨタディーラーの取り扱い車種統一など、新型フィットの低調にさまざまな外的要因が絡んでいるのは想像に難くない。だがこの記事ではあえて、クルマそのものにフォーカスを当て、気になるポイントを挙げてみたいと思う。
まず、販売現場の声として異口同音に聞かれるのが、そのエクステリアデザイン、とりわけグリルレスのフロントマスクだ。
筆者自身は、要素が多く子供臭さも感じられた三代目に対し、初代に近いシンプルな路線に回帰した新型には好印象を抱いているが、直近での購入を検討するユーザーには不評とのこと。いにしえのインフィニティQ45を例に挙げるまでもなく、グリルレスフロントマスクは今なお、多くの日本人には受け入れがたいもののようだ。

だが新型フィットには、フロントグリルがありデザイン要素も多いSUVライクな「クロスター」がある。そして間もなく、ホンダアクセスのコンプリートカー「モデューロX」も追加される見込みだが、今度は価格の高さがネックになるのだという。

となると、「ホーム」や「ベーシック」など売れ筋のタイプもフロントグリル付きのデザインにするより他にないわけだが、中国仕様の新型フィット(広汽本田扱い)およびライフ(東風本田扱いのバッジ違いモデル)の「スポーツ」を名乗る標準仕様には、当初よりグリル付きのフロントマスクと、よりスポーティなデザインの前後バンパーが与えられている。これをそのまま日本仕様にも適用すれば、少なからず状況は改善されるのではないか。
もっとも、ヤリスとノートはエクステリア全体が日本車離れした前衛的なデザインなのに対し、現行フィットはやや大人しく、さりとて初代フィットのように丸みを帯びたフェミニンな雰囲気でもないため、こうした小手先の変更がどこまで通用するかは不透明だが。
次にネックとなるのは、ホンダ車に期待されるスポーティさが、見た目のみならず実際の走り、グレード展開においても失われてしまったことだろうか。
2001年に初代フィットはデビューした当初、ホンダ車らしいスポーティさが皆無と言っても過言ではなかった……というのが、筆者が二度所有し、いずれも約1年で手放した際、痛切に感じさせられた実態だ。
しかしながら、翌2002年には1.5ℓガソリンエンジンを搭載する「1.5T」、2004年のマイナーチェンジでは1.5ℓの全グレードに5速MT車が追加。2007年デビューの二代目には「RS」が設定され、2010年のマイナーチェンジではMTが6速化されるなど、徐々にスポーティな走りとイメージが上乗せされていった。
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だが現行モデルの四代目では「RS」も1.5ℓガソリンエンジンもMTも全廃され、代わりに設定されたのは「ネス」という、内外装のみ爽やかスポーティ路線なモデル。また新型フィットには仕様を問わず、良く言えば穏やか、悪く言えば緩慢な加速特性とハンドリングが与えられ、三代かけて徐々に積み上げられたスポーティさはほぼ失われてしまった。

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そのスポーティな走りの性格は今後、前述の「モデューロX」が担うと思われるが、過去に公開されたコンセプトモデルやプロトタイプから推測すると、ベース車はe:HEV「リュクス」のみとなる可能性が高い。

そうなれば、やはりかつての「RS」のように、意のままの走りとホンダミュージックが堪能できる、1.5ℓガソリンエンジン+6速MTが欲しくなるが、これも決して夢物語とは言い切れない。新型シティハッチバック「RS」のインドネシア仕様には、このパワートレーンが存在する。
もちろんエンジンの環境性能は日本の法規に合わせる必要があるものの、三代目フィット「RS」と同じL15B型1.5ℓ直4直噴DOHC i-VTECをWLTCモードに対応させたものが、フリードに用意されている。これと6速MTを前述の中国仕様「スポーツ」の外観と組み合わせ、走りのセッティングも相応にスポーティにすれば、かつての「RS」の出来上がり、というわけだ。

そしてもうひとつの問題は、燃費だろう。ハイブリッドFF車の主力グレード同士でWLTCモード燃費を比較すると、フィット「e:HEVホーム」の総合28.8km/ℓ/市街地29.6km/ℓ/郊外31.8km/ℓ/高速道路27.0km/Lに対し、ヤリス「ハイブリッドG」は総合35.8km/ℓ/市街地36.9km/ℓ/郊外39.8km/ℓ/高速道路33.5km/ℓと、全モードで6km/ℓ以上の大差を付けられている。
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しかも現在のWLTCモードは、かつてのJC08モード以前の燃費モードとは異なり、たとえハイブリッド車でも実燃費との乖離は少ない。この差はお財布の中身を直撃するばかりか、フィットのWLTC総合モード燃費28.8km/L×燃料タンク40ℓ=1152kmに対し、ヤリスのWLTC総合モード燃費35.8km/ℓ×燃料タンク36ℓ=1288kmと、航続距離にも大きな影響を及ぼすので、ヘビーユーザーほど無視できない要素となる。
この差をもたらした最大の要因は、恐らく車重ではないか。ヤリス「ハイブリッドG」の1060kgに対し、フィット「e:HEVホーム」は120kgも重い1180kg。プラットフォームをゼロから設計できたヤリスに対し、先代からキャリーオーバーせざるを得なかったフィットの不利がここに顕在化している。こればかりは世代交代を待つより他にないだろう。
なお、車重1220kgのノート「X」は、総合28.4km/ℓ/市街地28.0km/ℓ/郊外30.7km/ℓ/高速道路27.2km/ℓと、フィットよりもむしろやや落ちるデータとなっている。
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フィットは初代よりセンタータンクレイアウトを核として、クラストップの室内空間とユーティリティの高さを備えており、現行モデルではさらに内外装の質感の高さや静粛性・乗り心地の良さも強みとしている。だが販売台数No.1の座を得るには、最早それだけでは手強い競合車に勝つことは難しい。今後のフィットには、まずはデザイン変更を含めたスポーツイメージの復権、次いで燃費の抜本的改善が心より待ち望まれる。
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