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トヨタMR-S(1999-2005)車重1トン未満にNAエンジン、理想を求めリヤトランクを捨てた!【週刊モーターファン・アーカイブ】

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2代目ロードスター登場の翌年・1999年に登場したのがトヨタMR-Sだ。その車体構成はリヤミッドシップに搭載したエンジンで後輪を駆動するMRにオープンボデ ィを組み合わせたもので、堅実なイメージのトヨタには似合わぬ挑戦的なモデルであった。ただし車名からもわかるようにこのモデルはMR2の流れを汲むモデルであり、従来路線からの大幅変更にファンは戸惑いを隠せなかったことも事実である。

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

レポート=ウナミ哲也(90年代国産車のすべて より 2011年刊)

MR-Sというクルマは、現在のところ正当な評価を受けていないといえるモデルの1台だ。

全長3.9m×全幅1.7mをそれぞれ切るコンパクトなボディ。リヤミッドシップマウントされたNAエンジンは可変バルタイ機構のついた当時としては最新のもの。さらにオープンボディという大付加価値。それでいて車重は1tを大幅に切る970kgに仕上がっており、価格も168万円からという安価なもの。

【リヤトランクを排除した潔い設計】歴代MR2やボクスターらと異なり、MR-Sではなんとリヤオーバーハングの重量増を嫌ってエンジン後部のトランクは排除した。このためリヤオーバーハングが非常に短くなっているのだ。近代フェラーリ・ミッドシップ車と同様の考え方。

ところが、売れなかった。

なぜだろう。時代がオープンモデルを必要としていなかったから?しかし同時期に発売された2代目ロードスターは全世界で30万台弱を売り上げる大ヒットモデルとなっていたのだ。ひるがえってMR-Sは8万台弱でしかない。ということはMR-S(といっても現代の目で見れば十分以上の成果だが)、とりわけ国内で人気がなかった理由は集約するとこうじゃないだろうか。「え、これってMR2じゃないの⁉︎」

【後に2ペダル仕様も追加】MR-Sは当初5MT仕様のみでスタートしたが、途中で電子制御クラッチを内包したシーケンシャル2ペダル5MTを追加。2002年からはいずれも6MTとなった。現行GT-Rらに採用の2クラッチ式ではなくシングル式だが、動作はスムーズだった。

初代MR2ことAZ型は日本初の本格ミッドシップスポーツとして人気を博し、2代目SW型もサイズは拡幅されながらもあくまでも「ミッドシップ」スポーツとして国内に数多あるモデルの中で独自の存在感を持っていたのだ。

【可変バルタイエンジンを搭載】搭載されるエンジンは1ZZ型1.8ℓ。自然吸気タイプで、VVT-iという可変バルタイ機構を備えていた。出力は140ps。

ところがこの、MR2ではないけど型式名はZZWという、明らかにMR2系列であるMR-Sはオープンボディを持ったことで「ミッドシップ」というよりも「オープンカー」としてのキャラ特性が立ち過ぎてしまった。そこで従来からのMR2ファンには戸惑いが生じてしまい、一般的なクルマ好きからすれば「オープンモデルならばド定番のロードスターの方がいい」という方向に行ってしまったのかもしれない。さらには、善し悪しはともかく独自の外観作りをしてきたMR2シリーズに対し、明らかに1996年発表のポルシェ・ボクスター風の外観が与えられたこともMR-Sにとって「自らのキャラ作り」ができない大きな理由になったと言える。

【ロングホイールベースで新境地】ホイールベースは、全長が20センチほども長い2代目MR2に対しても50mm長い2450mmとしている。従来、ホイールベースは短ければ短いほどコーナリング性能は上がるとされていたが、MR-Sの開発陣営はホイールベースの長さだけが、運動性能の善し悪しを決めるわけではないことを実証して見せた。MR-Sは実に軽快なハンドリングだったのである。また2代目MR-2の「ナーバスなハンドリングの克服」ということの両立を達成したものでもあった。
【MR2同様の前後ストラット式】サスペンションは2世代MR2と同様の前後ストラット式を採用している。
MR-SはじめFFベースのMR車ではこのサスペンション形式になるのが通例だった。

しかし冒頭でも述べたように今の目で見ると実に素晴らしい構成のモデルなのだ、MR-Sは。何しろこのモデル、最適な重量配分を求めてエンジン後方のトランクを排除(!)してしまうほどのピュアな思想を持って開発されたモデルだったのだから。そこまで思い切った設計をしていても商品というのは名前や外観から受けるイメージを大きく左右してしまう。けれど、そうした確定要素も含めていかに商品の成否を左右することも、また確かなのだ。

【逆転思想のトランクの位置】さて上方の写真で「エンジン後方のトランクは排除」したと書いたが、そこは天下のトヨタ。荷室スペースを設けないわけがなく、実はシート背後にかなり大きいトランクスペースを用意していたのだった。ホイールベースの延長はもしかしたらこのトランクスペース確保のためか?とも疑いたくもなるが、リヤエンドにトランクを設置するよりスポーツカーの素性としては正しい。また、実は360モデナ以降のフェラーリもこうした考え方でシート後方に大きなトランクスペースを(ひっそりと拡大しつつ)設けている。

第257弾 TOYOTA MR-Sのすぺて 1999年10月発売

SPECIFICATIONS

全長(mm):3895
全幅(mm):1695
全高(mm):1235
ホイールベース(mm):2450
トレッド(mm)前/後:1475/1460
車両重量(kg):1020

型式:1ZZ-FE型直3 DOHC
ボア×ストローク(mm):79.0×91.5
総排気量(cc):1794
圧縮比:10.0
最高出力(ps/rpm):140/6.400
最大トルク(kgm/rpm):17.4/4.400
燃料供給装置:電子制御式燃料噴射
燃料タンク容量(ℓ):48

1速:3.166
2速:1.904
3速:1.392
4速:1.031
5速:0.815
6速:0.725
後退:3.25
ファイナル・レシオ:4.312

ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション前:ストラット/コイル
サスペンション後:ストラット/コイル
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ前:185/55R15
タイヤサイズ後:215/45R16

馬力荷重(kg/ps):6.93
最小回転半径(m):5.0
10モード燃費(km/ℓ):14.80
東京地区標準価格(万円・当時):207.9

MR2の流れを汲むモデルだが…

MR-Sは初代(写真左)と2代目(同右)のMR2後継モデルとして開発されたモデルだ。 しかし車名の違い、というよりもボデイタイプの違いから受け止める側にはMR2シリーズは2代目で断絶したものと判断していたように思う。

モーターファン別冊 その他のシリーズ 90年代国産車のすべて

■10~20年前のクルマに感動しよう!
 80年代という時代は、非常に興味深いクルマがふんだんに登場し日本の自動車史に名を残すモデルが目白押しでした。そこには80年代後半にむけて興ったバブル経済の影響も少なからずありました。逆に90年代はバブル経済の崩壊が代表的なキーワードとなることもあり、あまり良い印象がありません。同様にその当時のクルマもそれほどインパクトがあった記憶がないのです。しかし、情熱だけで押してきた80年代に対して、90年代は80年代に並行して行われていた技術開発が開花した時代でもあったのです。実は「クルマはこうあったらいいな」という思いが結実したのが90年代だったのです。そして興味深いのが、これらのクルマの多くは現在でも中古車市場で販売されている点です。程度は保証の限りであはりませんが、興味を持てたら自分のクルマにしてみるのも面白いかもしれません。

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