オーナー目線で勝手にインプレッション 連載第4回『よろしく! スズキ・ジムニーシエラ』自分のクルマなのに試しに走る
- 2018/06/24
- MotorFanアーカイブ編集部 山口 尚志
■街乗り・砂利道での乗り味は
軽ジムニーとシエラの違いで、心配と興味が混在していたのは乗り味だ。
軽ジムニーではヒビが入った路面の坂を下る際、硬めのサスペンションにも起因する、横に跳ねるような挙動が認められた。
それを念頭に、シエラを似たシチュエーションに持っていくと、トレッドが90mm広いだけの安定感を示してくれた。
「シエラは普通車。安定性にものをいう、プラス90mmトレッドの余裕」である。
シエラも跳ねるような感覚がないといえば嘘になるが、低燃費を意識しすぎるあまり、タイヤ圧を過剰なまでに高めた最新コンパクト勢の乗り味を思うと、むしろシエラは乗り味が優れているといってよい。
70%プロフィールタイヤに負うところもあるのだろうが、リジッドアクスルのサスペンションでここまでできるのである。
一体、コンパクト級のクルマたちは何をやっとるか?
といいたくなってくる。
ティーダは納車時から乗り味が硬かった。
検討時には日産レンタカーから24時間借り、ずいぶん走り込んで検証したつもりなのだが、レンタカーは前期型だったから、後期型は手を入れ過ぎたのかもしれない。
私のティーダはタイヤが指定圧なのに、荒れたアスファルト路面を通過するたび、その振動がほんと大げさでなく、
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ・・・・・」
と室内全体に響き渡ったし、カタログでは「微小突起による微振動を吸収するリップルコントロール付き・・・」などと謳っていたが、そんなものがなかった、その前のブルーバードのほうがよほど乗り心地は良かった。
乗り味を炊いたご飯で例えると、登場初期から「乗り味が硬い」が定評だった初代フィットは、水を少なめに炊いたこわい(ごはんでは「硬い」の意味。おこわの「こわ」ね。「恐ろしい」ほうのこわいではありません。)ご飯だ。
パルサーもこれに近い。
いっぽう、ブルーバードはやや水を多めにした、ちょっとやわらかめのごはん。
ティーダはやわらかい、硬いという以前に、ふだん料理をしない人が初めて炊いた、芯が残ったご飯という印象だった。
話を戻してわれらがシエラ。
通常の幹線路を流れに乗って走る限りは、音も乗り味も普通のクルマと変わりはない。
いわゆるHT(ハイウェイテレイン)タイヤのおかげか、よく見れば普通タイヤに近いパターンのせいでロードノイズは標準的。
それだけに、夜間休止中の工事現場を通過する際、タイヤにからみついた小砂利がホイールハウス内で踊りまわるカツカツ音が、かなり直接的に入ってきた。
ボディサイドへの石跳ね(チッピング)と同じ音がするのだ。
ホイールベースが短く、リヤタイヤが運転席のすぐ後ろにあることとも無関係ではないが、まずはホイールハウス内のPVC塗装(錆び止め&防音のためのもの)が不足しているのである。
それでいて、雨天下でタイヤが水を叩く音は普通車並みなのが不思議だ。
たまに乗せてもらう妹の現行キューブなんて、雨の日はリヤタイヤ付近から、水漏れを疑うほどのバシャバシャ音がダイレクトに入ってくる。
本格オフロードを這いずりまわるチャンスはまだ得ていないが、河川敷レベルの砂利道・砂道を試したら、歩行速度並みであってもさすがに体がゆすられる。
変に身体をシートに押し付けず、クルマの揺れに身を任せると、上半身がメトロノームの針なみに左右に振られるのだが、このへんはそうとわかって乗るクルマだから、欠点に入れるわけにはいかない。
少し場所を変え、こんどは砂地に、あえて2WDでゆっくり入ってみたら、割と簡単にスタックした。
ここでも人が歩く程度の速度だが、はずみがあるうちはジリジリとがんばって進むが、アクセルをわざと放し気味にすると砂の抵抗ですぐに失速し、グリップ不足になって止まってしまう。
アクセルを踏んだところで後輪は砂を掻いて空回り、ここでもさきのカツカツ音が顔を出した。
試そうと思ってわざと行ったことであるから別にそれでいいのだが、ここで「4WD」スイッチを入れると、駆動力を半分受け取った前輪も仕事をするようになる。
その動きは、4駆の性能をフル発揮し、何が何でもガンバってというのではなく、「ヤ、ただいまお見苦しい姿をお見せしました。ここからは粗相のないように・・・」と、スルリ再発進してしまうところがとぼけていて愛らしい。
ここは前橋市内を流れる川沿いの砂地だから、無理すればティーダででも通過できるような場所だが、もっとフカフカな砂地でも同じだろう。
タイヤがのめり込むほどの砂地ともなると、さすがの陸の王者・ランクルあたりでも2t超の重量が災いして悪あがきをするようになる。
そんなシーンでも、わずか1t前後の軽いジムニーならすまし顔で進んでいくことができるのだ。
実は同じ本格ヨンクでも、軽量さをも併せ持つことこそがランクルにもかなわない、ジムニーならではの価値なのだ。
ここでは納車初期の4WDの働きを確認するだけのために行った、簡単に試しでしかないので、それ以上のことを書くことはできないが、このシンプルな4WDが本領発揮する場面で試したら、どんな動きを示してくれるのかを見てみたい。
■M13Aエンジン
エンジン音は、始動時からさすが普通車で、軽ジムニーだって辟易するようなやかましさではなかったが、そのあとでシエラに乗ると、やはり軽のほうが音質・透過音とも「しょせんケー」だったことがわかる。
ただし、ティーダに慣れた身にはさすがにアンダーパワー。
流れのある幹線路が要求するアクセルの踏み込み量は大きめだ。
1300のシエラは車重が1070kg、最大出力が88psなら最大トルク12.0kg。
対する1500のティーダは1170kgの重量に109ps、15.1kgの出力・トルクである。
単位重量あたりの負担はシエラのほうが大きいから、アンダーパワー感を抱くのも当然だ。
ただ、クルマのパワー感などあくまでも相対的なもので、それまでどのクルマに乗っていたかによって変わってくるものだ。
前にクラウンやランクルに乗っていた人ならシエラはより非力に感じられるだろうし、それこそ軽ジムニーからの乗り換えなら、「パワフルなシエラ」に評価は変わってしまうのだ。
ティーダのHR15DEは大きなトルクを低回転から発するので、アクセルに足を添える程度で巡航できたが、そのあとのシエラだと、加速するにもキックダウンちょい手前、いや、足前まで深く踏み込まなければならない。
当然エンジン音は高まるわけだが、M13Aエンジンの音が気に障ることはなかった。
回転が高まるとざらついた音質にはなるが、ここはM13AもHR15DEも似たり寄ったりで、決して不快なものではない。
直6でもV6でもいいのだが、私は「そこいらの大衆4気筒といっしょにするな」とでもいいたげな、えらそうな6気筒エンジンの音が好きだ。
シエラの4気筒M13Aの、始動直後から奏でるエンジン音が、小さい頃に見たセドリックあたりの6気筒エンジンのえらそうな音に似ているのがいい(私の主観です。)。
スターターモーターに起こされて目覚めた瞬間の、「フォーン」という音が実に貫録があって気に入っている。
同じM13Aを積む、過去のスイフトもえらそうだったのだろうか。
気になる点もあって、納車した3月から4月上旬までの、まだ冬の名残りが感じられる気温の低い日に、その日の第1回目のエンジンのかかりが悪いときが数回あった。
時間にして2~3秒。
昔のキャブレター車じゃあるまいし、いまどき、電子制御燃料噴射なら長くても1秒強でかかるのが普通だから、この2~3秒は長い。
1か月点検のときに訴えたが、やはりいくつか例があるのだそうで、原因不明とのこと。
このへん、スズキ開発陣に話をうかがいたいところだ。
だいぶ気温が高くなっているいまこそ、その症状はなりを潜めているが、梅雨で気温が低い日は、やはり怪しげな始動を演じる。
夏が終わり、秋を経て冬に入る頃、ふたたびこの症状が表れるだろう。
要観察である。
高速道路はまだ長い距離走っていない。
いや、ほんとうは「初代ギャランΣ/Λすべて」撮影前日の3月11日、愛知県・岡崎市に向けて東名高速を走ったのだが、なんとまあ、東京から名古屋まで雨のまま。
それも、世界じゅうの雨雲が集まって東名高速上を細長く覆い、シエラだけ目がけて降っているのではないかと思うほどの大雨で、普段どんな雨も何のそのといっている私も、さすがに恐怖心が先立って、思うとおりの走りはできなかった。
・・・フロントガラスが割れるかと本気で思ったぞ。
同じ場所を1時間前に通過したカメラマンも恐怖いっぱいだったようだ。
・・・今回は、納車まもない頃の印象を思い出しながら書いたので、順序が支離滅裂になってしまった。
他にもまだ書きたい項目はあるが、別の機会に。
また次回、お逢いしましょう。
(第5回につづく)
連載第5回『よろしく! スズキ・ジムニーシエラ』 Panasonicナビ 取付け気苦労物語・180mmスペースにワイド200mmナビを入れる法 ~だからATになった~
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